【ケース9】3Dデータのファイル名と版数はどういう関係であるべきか?設計現場のデータ管理を考える(9)(1/3 ページ)

連載第9回は、PDMシステムによる効果的な3Dデータ管理に必要な「ファイル名と版数が結び付く名称設定」をテーマに、3Dデータのファイル名と版数はどういう関係であるべきかを考える。

» 2023年02月02日 09時00分 公開

 PDM(Product Data Management/製品情報管理)システムの運用は、CADで作成した3Dデータのバージョン管理を行うことを目的としています。例えば、流用設計をする場合、既に出荷済みの過去の3Dデータを参照しますが、PDMシステムで管理してあれば、手間や時間をかけずに、効率的に該当データの最新バージョンを参照できます。

 前回お届けした「3Dデータのファイル名は個別認識できるユニークなものに!」の中で、PDMシステムは改訂記号による版数管理の設定が行えるため、記号を追記しなくてもその履歴に沿った3D図面を見ることができると説明しました。

 今回は、PDMシステムによる効果的な3Dデータ管理に必要な「ファイル名と版数が結び付く名称設定」をテーマに、3Dデータのファイル名と版数はどういう関係であるべきかについて考えます。

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ケース9:3Dデータのファイル名と版数はどういう関係であるべきか?

 設計者は、不具合が解決された最新バージョンの設計内容(3Dデータ)を参照して流用設計を行うだけでなく、あえて履歴をさかのぼり過去の実績のある履歴に対して改造設計を施すこともあります。

 手描き図面や2D CADの場合、図枠中の改訂番号(△記号+数字)、改訂日、補足説明、図面中に記された寸法変更の値、改訂番号などによって、「いつから」「どのように改訂されたのか」を記していました。

組立図
 □ ○ ○ ○ ○ − △ △ a:初版
 □ ○ ○ ○ ○ − △ △ b:第2版

部品図
 □ ○ ○ ○ ○ − △ △ a − 0 0 1 a:初版
 □ ○ ○ ○ ○ − △ △ b − 0 0 1 b:第2版

 これに対して、3D図面の場合は、別名で保存しない限り、改訂によってCADファイルは「上書き」されてしまいます。また、2D CADで描かれた図面のように、3D図面の中でその履歴情報をテキストとして見ることもできなければ、3D図面と連携している2D図面の中では、改訂前の数値は上書きされてしまいます。そのため、3Dデータ管理を行うPDMシステムでは、改訂履歴をシステム版数(Ver)として管理します。

 では、実際に3D CAD運用を行い、PDMシステムを活用していく上で、改訂図面は別名管理とすべきでしょうか? それとも、同一名管理とすべきでしょうか?

 ちなみに、「改訂」という表現は、本来「リビジョン」とすべきだと思いますが、本連載では「改訂により更新されたもの」という考えに基づき、以降「バージョン」と表現することにします。

図面番号の採番ルールはどうなっている?

 筆者の勤務先では、2D CAD運用を開始して以来、以下のルールに基づき図面番号を付けています。

■図面番号

図面番号

(1)種別
図面の種類を表す
 A:組立図(ユニット図)、総組立図
 B:部品図
 C:配管系統図

(2)ユニット番号/部品番号
装置が複数のユニットで構成されている場合、ユニットごとに設定(例:100)

(3)枝番号
1つ前の分類との関連付けに使用(例:1)

(4)ディレクトリ(機種)
どの装置のために描かれたものなのかを表す(例:CR01)

 そして、この図面番号の付け方が基準となり、以下のようにファイル名を決めています。

■ファイル名

図面番号

(4)ディレクトリ(機種)

(1)種別

(2)ユニット番号/部品番号

(3)枝番号

 部品加工を行う際、“1図面=1加工データ”という考え方がありますが、万一、同一名称の図面で寸法修正が発生した場合、加工部門の担当者はこの修正箇所を簡単には見つけられません。

 そこで、当社では寸法の修正などが発生した場合、これを「バージョンアップ」として捉え、上記の例のように、「枝番号」をカウントアップすることで、これが旧図面をバージョンアップした新図面であることを明示しています。

 2D CAD運用時では、ディレクトリ(機種)別のフォルダを作成し、さらにその下に図面の種別によるフォルダを設けて、そこにファイルを保存していました。PDMシステムを運用する前も、この保存方法と同じルールで運用していました。

 図面番号という設計管理における基本の部分と、これを保存するためのファイル名のルールには、各社各様の考え方があるはずです。その企業の文化といえばそれまでですが、そこには必ず理由があるはずですので、新たにルールを決める際にはそのあたりもしっかりと押さえておくとよいでしょう。

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