CFDやVRによる風洞実験などを活用して開発した自転車競技用エアロヘルメット:CAEニュース
ダイアテックは、オランダの自転車競技チームが使用して話題となったエアロヘルメット「AERO HEAD MIPS II」の販売を開始。CFDやVRによる風洞実験に加え、チームの意見を反映し、調整を重ねて開発した。
ダイアテックは2024年12月6日、GIROのエアロヘルメット「AERO HEAD MIPS II(エアロヘッド ミップスII)」の国内販売を開始した。価格は7万9200円(税込み)となる。
AERO HEAD MIPS IIは、オランダの自転車競技チーム、ヴィスマ・リースアバイクが2024年のタイムトライアル(TT)で使用したことで、大いに注目されたエアロヘルメットだ。CFD(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学)やVR(仮想現実)を使用した風洞実験を実施し、ヨナス・ヴィンゲゴー選手を含む同チームからのフィードバックを得ながら、調整を重ねて開発された。
ヴィスマ・リースアバイクが使用したエアロヘルメット「AERO HEAD MIPS II」[クリックで拡大] 出所:ダイアテック
体の中に頭を入れるような近年のTTポジションに合わせて、手と顔の隙間を埋めて肩や背中に風がスムーズに流れる形状になっている。
「AERO HEAD MIPS II」開発の様子[クリックで拡大] 出所:ダイアテック
ヘルメットの内側は、先端から後方まで大きく空気が流れる道が通っているため、高強度で走るタイムトライアルでも涼しさを確保できる。バイザーはマグネットで取り付け可能で、取り付けた場合も顔と先端の間から空気が入り込み、ヘルメットを循環する。
「AERO HEAD MIPS II」の内側[クリックで拡大] 出所:ダイアテック
バイザーはマグネットで取り付け可能[クリックで拡大] 出所:ダイアテック
安全対策にも気を配っている。外側のシェル部分と内側のEPSフォームを一緒に熱成形するインモールド成形を採用し、外側のシェルがEPSを下まで覆うことで強度を高めている。また、内側にはMIPS(多方向衝撃保護システム)を搭載し、落車時の衝撃を吸収する。安全基準が高い米国のCPSCやEU加盟国の安全基準CE EN1078、JCF(日本自転車競技連盟)の認証を受けている。
提供サイズはLで、重量は575g(本体467g、バイザー108g)。ヘルメットがぴったり収まる専用ケースと、2種のバイザー(カールツァイス製、グレーとクリア)が付属する。本体カラーは、マットホワイトとマットブラックを用意する。
「AERO HEAD MIPS II」マットホワイト[クリックで拡大] 出所:ダイアテック
⇒ その他の「CAE」関連ニュースはこちら
- カシオが電子キーボードの鍵盤構造の変更にCAEを活用、その効果と展望
電子楽器開発で40年以上の歴史を誇るカシオ計算機は、グリッサンド奏法の操作性を維持するために採用してきた旧来の鍵盤構造を見直すべくCAEを活用。新たなヒンジ形状を導き出し、作りやすい鍵盤構造を実現することに成功した。その取り組み内容とCAE活用の展望について担当者に話を聞いた。
- フォークボールはなぜ落ちる? スパコンによる空力解析で謎を初めて解明
野球のピッチャーの決め球、フォークボールはなぜ落ちるのか? これまでボールの回転数が少ないことで自然落下による放物線に近い軌道を描くとされていたが、東京工業大学 学術国際情報センター 教授の青木尊之氏を代表とする研究チームがスーパーコンピュータ「TSUBAME3.0」による数値流体シミュレーションを実施し、その謎を初めて解明した。
- 「富岳」で新型コロナ飛沫の大量計算を実施、感染リスクはどこにある?
理化学研究所のスパコン「富岳」を用い、コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する飛沫の飛散シミュレーションが実施されている。理化学研究所が独自開発する流体シミュレーションソフトウェア「CUBE」による飛散シミュレーションの概要、注目すべき結果などについて、理化学研究所 計算科学研究センター チームリーダー/神戸大学大学院システム情報学研究科 教授の坪倉誠氏に話を聞いた。
- ヤマ発が語る、バイク開発に不可欠な「ほこり入り解析」の新手法とその妥当性
ヤマハ発動機は、オンラインイベント「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2020 ONLINE」において、「モーターサイクルのほこり入りCFD解析について」と題し、CFDソリューション「PowerFLOW」をモーターサイクル(オートバイ)開発に適用した取り組みについて紹介した。
- シミュレーション主導設計の実現に向けた八千代工業の挑戦
八千代工業は、ダッソー・システムズ主催の「Dassault Systemes User Conference 2019」において、「CATIA、Abaqus、Isightを使った樹脂製燃料タンクの最適設計技術の構築と設計者展開」をテーマに講演を行った。
- 仮想実験室からデジタルツインへ、富岳が実現する自動車業界のCAEの形とは
ヴァイナスのユーザーイベント「VINAS Users Conference 2019」で、理化学研究所 計算科学研究センター・神戸大学大学院システム情報学研究科 計算科学専攻 チームリーダー・教授/博士(工学)の坪倉誠氏が登壇し、「HPCシミュレーションとデータ科学の融合による新たな自動車空力について」をテーマに講演を行った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.