3D CADの本格運用に際して直面する「データ管理」に関する現場課題にフォーカスし、その解決策や必要な考え方を、筆者の経験や知見を交えて解説する。第8回は「誰もが分かるデータとその管理」をテーマに、3Dデータにどのような名称を付けてPDMシステムに入力(保存)すべきかを考える。
これまでPDM(Product Data Management/製品情報管理)システムで管理される3D部品、3D組立図について説明してきました。これらのデータをPDMシステムで管理するには、その“仕組み”について理解を深めておく必要があります。
最初に考えなければならないのは、管理したいデータを他のデータと“どのように区別するのか”です。今回は「誰もが分かるデータとその管理」をテーマに、3Dデータにどのような名称を付けてPDMシステムに入力すべきかを考えます。
PDMシステムを利用する上では、“データを管理する”という考え方が求められます。IT領域のお話に近いですが、1つのシステムを運用していく以上は最低限の知識は必要だと考えます。
PDMシステムによるデータ管理と、従来のフォルダ管理(ファイル保存)との最大の違いは、PDMシステムによるデータ管理が“データベース(以下、DB)構造を利用した仕組み”だということです。
DBとは、関連する一連の情報を保存し、それらを使いやすい形に整理して利用できる情報のかたまりを意味します。個人名、郵便番号、住所、電話番号などがひも付いた住所録のようなイメージです。そして、コンピュータ上でDBを運用/管理するためのシステムのことを「DBMS(DataBase Management System/DB管理システム)」と呼びます。ちなみに、著作権法の中でDBは「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報をコンピュータを用いて検索することができるように体系的に構成したもの」と定義されています。
PDMシステムもまさにこのDBの一種です。PDMとは“Product Data Management”であり、CADデータやBOM(Bill Of Material/部品表)といった製品の設計開発に関わるデータを一元管理(製品情報管理)するものです。設計開発の際に作られるCADデータも、CADデータ以外も全て設計開発に関わるドキュメントであり、これら全てを“何らかのひも付けによって管理する”ことを目的としています。
ここで「PLM(Product Lifecycle Management/製品ライフサイクル管理)」との違いについて疑問を持たれるかもしれません。PLMは、開発期間の短縮、生産の効率化、市場投入の最適化を目的とし、製品の企画、設計から生産、販売、廃棄に至るまでの“ライフサイクル”といわれる全期間の製品情報を一元管理するものです。PDMが設計開発から出図に至るまでの範囲をシステム化しているのに対し、PLMは製品ライフサイクル全体をシステム化しているといえ、統合情報管理としての範囲が異なります。
以下に、PDMシステムで管理されるデータについて示します。
PDMシステムで管理されるデータ
設計者からすれば、3Dデータが正しく保存され、運用できればよいと考えますが、PDMシステムは3Dデータの形状だけを見て管理しているわけではありません。これまで解説してきた通り、PDMシステムの運用目的は以下になります。
PDMシステムでデータを管理する目的
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