日本とドイツでは異なる状況にあるようですが、では世界的に見ると、どちらの状況がより一般的といえるのでしょうか。各国のグラフの形を眺めて比較してみましょう。
図3が各国のGDP分配面のグラフです。米国、英国、フランス、カナダ、韓国、スウェーデンをピックアップしてみました。多少の傾向の違いはありますが、おおむね以下の点が共通しています。
付加価値を増やしながら、それを主に企業と労働者で分け合っている状況が良く分かるのではないでしょうか。稼ぎ出した付加価値の内、おおむね50%程度は労働者に分配されています。
日本の経済は長い間停滞が続いていますが、並行して労働者の低所得化が進んでいるのが特徴です。しかも、前回ご紹介した通り、男性の現役世代のうち特に40代が最も低所得化しているという事態も生じています。付加価値が増えていないので、その分配である雇用者報酬も増えないのは道理です。
日本の場合は、このような状況で労働者数が増えていますので、1人当たりの平均給与が下がっている状況です。仕事の価値(付加価値)と対価(賃金)の在り方が、日本だけ異質なのかもしれません。GDPの分配面に着目することで、現在の日本経済の特殊性が垣間見られたのではないでしょうか。
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
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