では、現実問題として、「プラスチック使用量を減らすために軽量化を図りつつ強度を維持し、かつ分解しやすい構造を採用する」や「形状や構造を見直して製品全体の耐久性、運搬性を向上させる」といった難しい要求(サステナブルなモノづくり)に対して、設計現場としてどうやって応えていけばよいのでしょうか。
そのアプローチの1つとして挙げられるのが、「設計者CAE」によるフロントローディングの実践ではないかと考えます。「何を今さら……」と思われるかもしれませんが、近年のサステナブルなモノづくりの実現において、その重要性がますます高まっているといえるのです。
設計者CAEは、設計作業の初期段階から設計者自身がCAEを用いた解析を実施し、その結果を設計にフィードバックして早期に品質と性能を作り込む手法のことで、特に目新しいものではありません。ただ、今後求められていくサステナブルなモノづくりにおける難しい要求を、限られた製品開発期間の中で実現していくためには、設計プロセスの中にシミュレーションを取り入れた“バーチャルなモノづくり”“設計(モデリング)と解析(シミュレーション)のシームレスな連携によるモノづくり”の実践は、ムダな試作や実験の削減(廃棄物の削減)の観点からも、これまで以上に重要になっていくことでしょう。
近年、3D CADに付属する、あるいはオプションで利用できる使い勝手の良いCAEツールだけでなく、アンシスの「Ansys Discovery」のようなリアルタイムシミュレーションツール、さらには共通プラットフォーム上でモデリングとシミュレーションをシームレスに行き来できる設計開発環境(例:ダッソー・システムズが提唱する“MODSIM”のコンセプト)など、ツール面での選択肢の幅も広がっており、運用ルールや体制づくりといった課題はあるにせよ、最低限の解析に関する基礎知識があれば、設計者CAEのハードルは以前ほど高くはない印象です。また、こうしたツール利用も近年はサブスクリプション方式での提供にシフトしていることから、初期導入費用を抑えた柔軟なライセンス運用が可能な点も設計現場のCAE利用のハードルを下げる要因につながっているといえます。
サステナブルなモノづくりにおける難しい要求に応えるために、設計者CAEを実践する中で、衝突/落下解析のような「より高度な解析を行いたい」といったニーズも増えていくことが予想されます。もちろん、解析専任者が使用しているようなハイエンドCAEツールを、設計者自身が使いこなすことは容易ではありませんが、例えば、ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE Works Simulation」のように、設計者CAEと解析専任者CAE(ハイエンドCAEのソルバー群の利用が可能)の両方の顔を併せ持ち、3D CADとのシームレスな連携、クラウドコンピューティングを活用した計算処理、解析データの共有/管理(ナレッジ化)を可能とする便利で使い勝手の良い環境も登場しつつあります。
環境へ配慮した設計、サステナブルなモノづくりの実践は今後避けては通れない流れだといえます。2022年4月1日に施行されたプラスチック資源循環促進法を絶好の機会だと捉えて、3D CAD活用、設計者CAEの実践につなげ、3D推進の全社展開を目指す企業が増えていくのではないでしょうか。
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