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» 2022年11月15日 06時00分 公開

二輪車の死亡事故ゼロへ、ヤマハ発動機の安全技術戦略安全システム

ヤマハ発動機は2022年11月11日、二輪車の安全ビジョン「人機官能×人機安全」を発表した。2050年の交通死亡事故ゼロに向けて、人と二輪車が高い次元で一体化することによる喜びや興奮と、人と二輪車の相乗作用による高度な安全の両立を目指す。

[齊藤由希MONOist]

 ヤマハ発動機は2022年11月11日、二輪車の安全ビジョン「人機官能×人機安全」を発表した。2050年の交通死亡事故ゼロに向けて、人と二輪車が高い次元で一体化することによる喜びや興奮と、人と二輪車の相乗作用による高度な安全の両立を目指す。

 安全ビジョンに基づき、認知や判断、操作、被害軽減をアシストする「技術」、安全に関する知識や経験の獲得、運転技術の向上を支援する「技量」、クラウドの活用によってつながりを増やして安全に関するフィードバックを行う「つながる」の3つの領域に注力する。

「技術」「技量」「つながる」の3領域に力を入れる[クリックで拡大] 出所:ヤマハ発動機

二輪車の事故を防ぐには

 ヤマハ発動機によれば、34カ国で調査した交通事故死者数は四輪車では減少傾向が続いている一方で、二輪車は微増傾向となっている。二輪車の交通事故死者数を減らしていくには、ユーザーと二輪車が協力して事故のない社会を目指していく必要があるという。二輪車はライダーが体全体を使って車体の動きをコントロールする。事故を防ぐには、人と二輪車が両輪となって連携する必要がある。

 二輪車が関連する事故の原因のうち、3割が二輪車のライダーの過失、5割以上が四輪車のドライバーの過失であるという。ライダーの認知/判断/操作のミスを防ぐだけでなく、二輪車に対するドライバーの認知/判断/操作のミスを防ぐことも重要になる。この両方にヤマハ発動機で取り組んでいく。

 技術開発だけでなく、安全運転教育にも力を入れる。新興国では交通ルールの徹底、二輪車の免許制度の整備などを後押しすることも必要になると見込む。

 欧州での調査によると、二輪車が絡む事故は、事故のきっかけから2秒以内に発生している。2秒以内という短時間でライダーが適切な回避操作を行うことは難しいため、緊急回避が求められる場面で運転支援技術がライダーを支える余地が大きいとヤマハ発動機はみている。

 また、ライダーが事故のきっかけとなる運転ミスを起こさないようにするためのアシストも重視している。その上で、エアバッグなどライダーの保護装置、自動通報など、事故が避けられなかった場面での被害軽減技術にも取り組む。

ライダーの操作ありきのアシスト技術

 2023年に発売するモデルで搭載するのが、ミリ波レーダーを使った「ユニファイドブレーキシステム」と「アクティブクルーズコントロール」だ。まずは高速域を走行するモデルと市場向けに展開する。ユニファイドブレーキシステムは、ライダーが前方車両に接近しすぎたとき、ライダーのブレーキ操作が不十分だと判断すると前後輪のバランスを見ながらブレーキをアシストする。制動が不十分な場合のみアシストが作動する点が、四輪車の衝突被害軽減ブレーキとは異なる。

 アシストが四輪車のように介入すると、二輪車の場合はライダーが転倒するなどかえって危険になるため、ライダーの操作ありきで足りない部分をシステムが補う、という考えで開発を進める。ライダーにとって違和感がないアシストであることも重視する。

 右折待ちのドライバーに直進する二輪車がいることを知らせる協調型ITS(高度道路交通システム)による右直事故防止も今後実用化し、普及させていく考えだ。2016年にホンダやBMWモトラッドと2016年に設立したコネクテッドモーターサイクルコンソーシアムを通じて、メーカーを超えた普及を目指す。四輪車向けを中心に進む車車間/路車間通信(V2X)の開発に二輪車も参加し、二輪車ならではのニーズも盛り込めるよう推進していく。

 高いバランス能力が求められる低速域で車両挙動を安定して保てるようアシストする技術「アドバンストモーターサイクルスタビリティーアシストシステム」も開発中だ。

 まずは時速5km以下でも車両の姿勢を安定化することを目指している。駆動力と操舵の制御によってバランスどりをアシストする。フルブレーキによってロックしても安定してバランスを保ち、低速時も安全に止まれるようにする。立ちゴケ防止にもなるという。フレームの変更を最小限にして搭載できるようにすることで、さまざまなモデルへの展開を目指す。緊急回避における走る/曲がる/止まるを安定させるようなアシスト機能も開発する。

安全装備は受け入れられるか

 これらの安全機能の実用化と普及には、システムの小型軽量化やコストダウンが課題になる。「二輪車の販売価格を踏まえると、先進運転支援システムの追加で許容される支払い額は5万円以下。3万円以下を目指して作り込む必要がある。ただ、日本市場では20〜30代の若年層や女性など新しいライダーが増えており、マナーや安全に対する意識が既存のライダーよりも高い。リーズナブルな価格であれば、安全装備も受け止めてもらえるのではないか」(ヤマハ発動機 社長の日高祥博氏)という。

 低い速度域のコミューターが中心のアジア市場では、ミリ波レーダーを使った高価で複雑なシステムではなく、車間距離や割り込みを認識し、状況に合わせて警報を鳴らすようなシンプルな機能でも安全面で貢献できる可能性も検討していく。

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