―― 他にこんなセンサーを加えたい、同期させたいデータって、具体的には何が考えられますか。
大塚 考えられるものはいろいろありますが、あんまり言ってしまうとやらなきゃいけなくなるので……(一同笑)。
例えば、こういう領域では筋肉の活動状態を調べる「筋電計」がよく使われるのですが、そうしたデバイスと同期したいというご相談を受けております。バイオメカニクスという領域の研究で、これに関しては検討段階に入っています。
―― いろんなデータが取れるとはいえ、多くの分野で活用しようと思うと、数値だけの生データを見せられてもよく分からないということになりませんか。やっぱり「ガワ」というか、見せ方、UI(ユーザーインタフェース)を工夫しないと、というところがあるのでは。
大塚 もちろんそうですね。今ご覧いただいているのは研究用データの提供の仕方で、結構細かいデータをお見せしています。確かに、これを一般の方が見て解釈できるわけはないので、一般の方向けのUI制作が今進行中です。
2022年の冬にメディカル領域向けの製品を出す予定で、そこでは患者さんや臨床のセラピストがぱっと見て解釈できるようなUIにします。実は当社は、そうしたUIを作る方がむしろ専門で、臨床向けでは超簡単に分析できるツールとして提案していこうと考えています。
―― そうですね、やっぱり知りたい人にとって意味があるデータをどうやって見せていくか。そこがやっぱり肝というか、腕の見せ所というか。
大塚 おっしゃる通りだと思います。当社はセンシングとクリエイティブのプラットフォームになることを目指しているのですが、そこでいう「クリエイティブ」というのは、まさにそのフィードバックやデータの見せ方の部分に当たります。センシングの精度だけを求めても、あんまり世の中に価値を提供できないので。当社はこれまでB2Cのアプリで作ってきたデザインが多くあるので、その知見をうまく活用して、データを意味ある形で分かりやすくするところも力を入れていきたいと思います。
全身の動きなどは、これまでモーションキャプチャー装置を使わなければ取れなかったところだが、装置を購入して常設するには1000万円単位のコストがかかるし、スタジオを利用しても1日数十万円かかる。
一方、ORPHE ANALYTICSの場合は、歩行やランニングといった動作に特化している。スポーツやエンターテインメント分野でなければなかなかペイできなかったデータ取得のコストを、研究や教育分野ならアカデミックプライスとして月額3万3000円で利用できるのは大きい。しかもデータの取得方法が簡単で、かつ結果がすぐに分かるところがポイントだ。ちょっとそこらへんを10秒歩いてみて状態をチェックする、みたいな利用ができる。
ここまで手軽になれば、これまで研究費の問題で断念せざるを得なかった分野でも、大きな発展が期待できる。ORPHE ANALYTICSから生まれてくる「次の何か」に注目しておきたい。
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手掛けたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
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