ランニングなどの最中にスマートウォッチで記録を取っている人は多いだろう。今回テストした「ORPHE CORE」というセンサーは、シューズに取り付けるだけで、全身情報を細かく測定できる。計測の手軽さから、大学や企業の研究、開発分野でも大きく注目されているという。
「デジタルヘルス」という技術も、新しいように見えて実はすでにかなりの歴史を積み重ねている。デジタル技術で運動をセンシングするという行為に火を付けたのは、AppleのiPodだった。iPodと連動するセンサーが登場し、さらにNikeから専用シューズが発売されたことで、”ワークアウト”という言葉が日本でも認知された。2006年、今から16年も前のことだ。
最初は靴や体にセンサーを取り付けるところから始まったこの取り組みは、やがて音楽プレーヤーやスマートフォン単体でもセンシングできるようになり、それらをアームバンドで腕に固定するといった方法が取られるようになった。それがスマートウォッチ、スマートバンドと移り変わり、現在に至る。
筆者はAmazfitのスマートウォッチを使っているが、歩いたり自転車に乗ったりすれば、自動的にそれぞれの運動に応じた測定モードが起動し、ログを収集してくれる。運動し始めてから、「あれ、記録してなかった」といったミスがなくなって一安心である。
先日、「ORPHE CORE」というセンサーが面白いという話を聞いたので、お借りしてテストしてみた。小型軽量のセンサーをシューズに取り付けることで、ランニングの様子が細かく分かるという製品である。
実際に走ってみると、走りを総合評価してくれるのはもちろんのこと、左右の足運びの違いも分かる。左右が均等にズレているのは、1週間ほど前に右足のかかとの筋を傷めており、それをかばって走っているからだろう。
スマートウォッチでは、走行距離やスピードなどに加え、心拍数や血中酸素濃度などが測定できるが、左右のバランスまでは把握できない。左右別々にセンサーを付けるだけで、多くの情報が得られることが分かった。
そんなORPHE COREを開発しているORPHEが、IoT(モノのインターネット)プラットフォームを展開するアプトポッドと共同で、ORPHE COREを使って全身動作をAI(人工知能)で解析するというソリューション「ORPHE ANALYTICS」を開発した。大学や企業の研究、開発分野ですでに導入が進んでいるこのソリューションについて、今回、デモを交えてお話を伺える機会に恵まれた。
お話を伺ったのは、ORPHE 執行役員/理学療法士の大塚直輝さんと、アプトポッド 代表取締役 坂元淳一さんである。センシングとリアルタイム解析の最前線は、どうなっているのか。
―― まずORPHEさんという会社の概要についてお伺いします。
大塚直輝氏(以下、大塚) 当社はもともと、中にあるポケットにセンサーを入れて靴をIoT化したスマートシューズを製品として展開しています。これで歩行とかランニングとか、そういう日常の足の動きを気軽にセンシングして、そのデータに基づいた音とか光とか音声フィードバックなどをアプリ上で提供する会社です。
―― それが今回は一歩進んで、研究分野に進出すると。
大塚 ランナー向けの製品を主に展開していたんですけど、気軽に動きが取れるところに着目した研究方面の方々から、その領域でも使いたいとお話を多々いただくようになりまして。これまでは一般向けのアプリしか展開してなかったんですが、それであればもうちょっと研究向けにも展開していこうと、現在、ORPHE ANALYTICSという製品を作っています。
―― これ、左右別々にセンサーを付けることで、かなり細かなデータが取れるんですね。
大塚 走りや歩きに関しては、スマートフォンでもある程度取れるデータは取れるんですが、ORPHE COREの場合はセンサーが足の動きを捉えていく点に特徴があります。これによって、ランニングや歩行中のストライドの長さとか、どういう姿勢で足が地面に付いているのか、どんな角度で蹴り出しているのか、足にどれぐらい衝撃がかかってるのか、といった、足にセンサーが直接付いていないと取れないようなデータをかなり細かく取れます。
そこが研究とかメディカルな領域で、引き合いが出てきているところになります。これまでだと走行分析をするには、モーションキャプチャーみたいな大掛かりな装置を使うのが研究領域では一般的でした。これはコストも時間もかかります。それが動作歩行に限定するのであれば、準備から計測、データ確認までおよそ2分でできる。小型センサーで完全にスピーディーに分析ができるところが、かなりの強みになると思っています。
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