【ケース5】誰でもPDMシステムに設計データを登録できるの?設計現場のデータ管理を考える(5)(1/3 ページ)

3D CADの本格運用に際して直面する「データ管理」に関する現場課題にフォーカスし、その解決策や必要な考え方を、筆者の経験や知見を交えて解説する。第5回は「誰でもPDMシステムに設計データを登録できるの?」をテーマに、PDMシステムのアクセス権について、「COLMINA CADデータ管理」を用いながら、その基本的な考え方と運用を考慮した際のポイントを紹介する。

» 2022年10月03日 08時00分 公開

 前回は、流用設計での利用を想定した「PDM(Product Data Management/製品情報管理)」のフォルダ構成について解説しました。装置設計を例に挙げると、全く分野の異なる装置にユニット単位で設計が流用されることもありますが、やはり最も多いケースは同じシリーズにおける流用設計です。いずれにしても、PDM運用において重要なのは「誰でも理解しやすいフォルダ構成を考える」ことです。この点はぜひしっかりと押さえておいてください。

 今回は「誰でもPDMシステムに設計データを登録できるの?」をテーマに、“PDMシステムのアクセス権”について、富士通の「COLMINA CADデータ管理(旧:PLEMIA Concurrent Design Manager)」を用いながら、その基本的な考え方と運用を考慮した際のポイントについて解説します。

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ケース5:誰でもPDMシステムに設計データを登録できるの?

 前回と同じく、初めてPDMシステムを導入した現場から、以下のような声が聞こえてきました。

【シーン1】
設計者A:さて、取りあえずユニット設計ができたぞ。PDMシステムに登録して、データを共有するようにいわれたけど……。フォルダ管理のときみたいに、誰でも登録できるものなのかな?

 これまでPDMシステムを使用していなかった現場の多くでは、社内ネットワーク上の共有フォルダ(あるいは自身のローカルPCのフォルダ)に3D CADデータを保存する“フォルダ管理”が当たり前のように行われていたかと思います。基本的に、Windowsのフォルダ管理に基づき、アクセス権やデータの編集可否の設定が可能で、場合によっては、誰でも閲覧/編集できるといった状況で、管理、運用されているケースも珍しくありません。

 では、PDMシステムを利用した場合はどうなるのでしょうか。あらためて、PDM運用の目的を確認してみましょう。

  • PDMの目的
    • データ共有
      • ローカルフォルダやネットワーク上でフォルダ管理されていた3D CADデータをデータベースに登録することにより、設計部門内での共有化を行うことができる
      • 設計部門内での改訂履歴管理ができる
    • コンカレントエンジニアリング
      • 設計情報を見ることができる環境を構築して、その情報を共有することで、設計部門以外もこのデータを参照し、設計品質を高めるための参画ができる
      • 3D CADデータを参照し、関連部門が関連文書を作成できる
      • コンカレントエンジニアリングはフロントローディングにつながる
    • 共通部品管理
      • 共通部品の利用促進ができる
      • 共通部品の改訂履歴管理ができる

 また、最近では主要3D CADベンダーが各種ツールやデータをつなぐ“プラットフォーム戦略”を推し進めていますが、その戦略の中においても、PDMシステムは“3D CADデータを共有/管理する場所”として非常に重要な役割を果たします。

PDMシステムのアクセス権について

 3D CADデータを共有/管理するとなれば、そのデータの「機密性(Confidentiality)」「完全性(Integrity)」「可用性(Availability)」が確保されていなければなりません。それぞれの頭文字から“CIA”ともいわれ、以下の状態がしっかりと確保されている必要があります。

  • 機密性
    • 認められた人だけが情報にアクセスできている状態
  • 完全性
    • 情報が正確であり、改ざんや破壊が行われていない状態
  • 可用性
    • 必要なときに安全に情報が利用できる状態

 PDMシステムに保管されている3D CADデータは、企業の重要な財産です。社内での共有を行う以上、CIAが十分に確保される必要があります。これは情報セキュリティ要素の高い内容であり、運用面においてはアクセス権の設定が重要となります。

 COLMINA CADデータ管理では、以下のようにグループフォルダアクセス権を設定できます。

COLMINA CADデータ管理におけるグループアカウント設定の例 図1 「COLMINA CADデータ管理」におけるグループアカウント設定の例[クリックで拡大]
グループ名 説明
System Administrator 管理者グループ
このグループに所属するユーザーは全てのフォルダに対して「更新権」を持つ
Everyone 必ず全員が所属するグループ
DESIGN (例)設計グループ
APPROVER_GROUP1 承認ルート設定用のグループ
APPROVER_GROUP2 承認ルート設定用のグループ
表1 「COLMINA CADデータ管理」におけるグループとその説明

アクセス権 説明 できること
アクセス権変更 ファイルやフォルダのアクセス権を変更可能
更新 フォルダやプロジェクト、登録されているオブジェクトの更新を行うことが可能
フォルダ、プロジェクトのプロパティ変更が可能
CADデータのロード
CADデータの保存
アセンブリへの組み込み
(参照利用)
参照 フォルダやプロジェクト、登録されているオブジェクトの参照を行うことが可能 CADデータのロード
アセンブリへの組み込み
(参照利用)
保存はできない
なし 参照権もない場合は存在が見えない 検索もできない
表2 アクセス権について

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