3D CADの本格運用に際して直面する「データ管理」に関する現場課題にフォーカスし、その解決策や必要な考え方を、筆者の経験や知見を交えて解説する。第4回は「どうやって設計データをPDMシステムで管理するの?」をテーマに、新規設計や流用設計が行いやすくなる3D CADデータの管理について取り上げ、PDM運用の基本的な考え方を提示する。
これまで「図面の改訂履歴管理と出図管理における問題から見るPDM(Product Data Management/製品情報管理)の効果」について解説してきました。
筆者の関わる産業機械分野の設計現場では、過去の実績を参考にするものがなく、一から設計を始める新規設計や、過去に実績のある設計を参考にしながら行う流用設計が行われています。例えば、1つの装置を構成するそれぞれのユニットを見ても、完全なリピートになるようなコピーや、一部編集するような設計、完全な新規の設計が混在することが多くあります。これらの構成は装置によってさまざまですが、総じていえるのは、流用設計の傾向が強いということです。筆者の感覚では60〜70%が流用設計です。
流用設計の定義は以下の通りです。
流用設計の最大の特徴は、過去の製造実績により、品質を担保できている点です。一方、新規設計は製造実績がないことから、流用設計に比べてリスクは高くなります。また、流用設計はコストダウンや短納期対応が可能だともいえます。
限られた設計期間の中で、理想的な設計を行うためには、過去の実績を利用しながら、仕様変更点にのみ着目した流用設計を行い、新規設計部分に設計工数を集中させることが望ましいと考えます。
そのためには、新規設計の段階から、将来、流用設計もできるような3D設計を目指す必要があります。
今回は“PDMで設計成果物を管理する”というテーマの下、新規設計や流用設計が行いやすくなる3D CADデータの管理について取り上げ、PDM運用の基本的な考え方を提示する。
まずは、初めてPDMシステムを導入した現場の声から見ていきましょう。
【シーン1】
設計者A:新規設計する3D CADデータをPDMシステムで管理するように言われたけど、そもそもどこで作業して、どうやって保存すればいいの?
設計者B:これまでのフォルダ管理と同じじゃないの?
設計者A:ホント? 全然イメージがつかないな……。
PDMシステムを活用していない現場では、設計者Bさんが言うように、新たな製番のフォルダを作成して、CADデータを保存しています(=フォルダ管理)。設計環境がシンクライアント(※注1)でなければ、各PCのローカルフォルダで管理するのが一般的でしょう。
※注1:シンクライアントとは、クライアント側の端末(PCなど)では限られた処理しか行わず、アプリケーションの実行やデータ管理といったほとんどの処理をサーバ側で行う仕組みのこと。
PDMシステムを活用したCADデータの管理について理解するには、「データベースによる管理とは何か」を知る必要があります。本稿では、富士通の「COLMINA CADデータ管理(旧:PLEMIA Concurrent Design Manager)」を例に解説していきます。
図1は、(1)1人で設計を行いPC単体でフォルダ管理するやり方、(2)チームで設計を行い社内ネットワーク上にある共有フォルダで管理するやり方、(3)PDMシステム(データベース)上で管理するやり方の3つを示したものです。
PDMシステム(データベース)によるCADデータ管理の特徴を以下にまとめます。
図2は、PDMシステム(COLMINA CADデータ管理)の構成例です。
また、PDMシステムにおける「キャビネット」と「フォルダ」の説明は以下の通りです。
キャビネット:
最上位のフォルダになります。ここにCADデータが保存され、PDMシステムによって管理されます。部門や拠点などの大きな分類のように、独立した管理が必要になる場合、このキャビネットを新たに作成して管理を行います。キャビネットはPDM管理者が作成します。
フォルダ:
製品群や製品の構成別のフォルダをまとめる単位になります。階層を持つことができますが、このフォルダに直接ファイルを持たせることはできません(以降で解説)。Windowsのフォルダとは異なります。
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