国土交通省は2022年9月9日、型式指定に関わる不正防止に向けて自動車メーカーへの監査を強化すると発表した。国土交通省自動車局と自動車技術総合機構によって、監査や指導を強化していく。監査などの手法は、今後も経験や知見を蓄積しながら不断の見直しを行うとしている。
国土交通省は2022年9月9日、型式指定に関わる不正防止に向けて自動車メーカーへの監査を強化すると発表した。国土交通省自動車局と自動車技術総合機構によって、監査や指導を強化していく。監査などの手法は、今後も経験や知見を蓄積しながら不断の見直しを行うとしている。
排ガスの長距離耐久試験に関わる監査では、監査時に測定データや試験条件に関する記録を詳細に確認する。また、型式指定審査を強化するため、試験条件別の走行キロ数や排ガスの測定時期と測定回数、部品交換の内容などのデータについても提出させ、審査機関で確認するとともに、申請者の社内チェック機能を働かせる。中長期的な対策としては、長距離耐久試験に関わる要件の国際調和の検討、固定劣化補正値の導入などによる長距離耐久試験の効率化の検討、大型ディーゼル車の使用過程車のサーベイランス導入の検討などを挙げている。
燃費性能試験に関しては、2025年から生産時の抜き取り試験が義務化されるため、監査でその実施状況や試験データを確認していく他、必要に応じて試験に立ち会う。また、試験に立ち会う際には、燃料流量計の設定値が校正証明書と同じであること、燃料流量が十分に安定してから測定していること、アイドリング条件での試験が他の条件と一連で行われていることなど試験結果を左右し得る設定や操作を調査し、確認項目として追加する。
また、虚偽報告の再発防止に関しては、第三者性を担保した社内調査を実施するよう指導するとともに、社内調査の実施体制や調査方法も含めて報告を求めていく。さらに、是正命令が発出されるような社内の問題点には、指導文書やプロセス監査などを通じて指導していく。
国土交通省が「不正をさせてしまった背景」として挙げた要因には、自動車メーカーとの信頼関係を前提にしていたことが影響している。例えば、長距離耐久試験は型式指定申請前に行われるため、審査官が立ち会っておらず、信頼関係を前提に自動車メーカーから提出された試験結果を受け取り、審査していた。エンジン制御プログラムが試験時と量産時で同じであるかどうかは、自動車メーカーとの信頼関係を前提に確認していなかった。
燃費試験に関しては、試験官が立ち会う際に燃料流量計の校正証明書を確認していたものの、証明書に記載されている設定値が変更されていないかまでは確認していなかった。燃料流量が安定しない段階で燃費測定を開始することで良い結果が出るように偽るなど、審査官が認識していない手口も今回明らかになった。また、馬力違いなどで燃費の設定は多様なため全ての燃費試験には審査官が立ち会っておらず、審査官が立ち会わない燃費性能試験で都合の良い測定結果を用いて試験結果を偽装できてしまった。
日野自動車に対しては、立ち入り検査の結果、基準適合が確認されたエンジンの出荷再開を2022年9月9日に認めた。出荷を再開できるのは、トラック/バス用のエンジン3機種と、建設機械など向けのエンジン4機種だ。一方、排ガス性能が基準に満たないことが確認されたトラック/バス用エンジン1機種、建設機械など向けエンジン3機種は型式指定を取り消す。
また、不正行為を二度と起こさないよう抜本的な改革を促すために是正命令も発出した。型式指定の申請体制や開発部門の業務実施体制、社内全体の技術管理体制のそれぞれについて問題を指摘するとともに、日野自動車が講じるべき措置を示した。
具体的には、不正行為を行うこと自体が困難で仮に不正行為が行われても発見できる体制を構築する他、コンプライアンス重視の意識を醸成する教育を法規認証部だけでなく開発部門にも実施すること、担当同士で連携して課題解決を図る仕組みを構築すること、開発部門長が責任を持って開発体制を管理することなどを挙げた。
さらに、会社としての一体感を醸成し、上位者に対して臆することなく意見具申できる組織風土に向けて改革すること、人事の固定化が不正の原因になり得るという認識の下で人事流動性を上げるなど人事の在り方を見直すこと、現場の状況や意見を常時把握するための仕組みづくり、今回の不正の教訓を基にした教育の徹底、自浄能力の創出なども必要だと指摘した。
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