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» 2022年08月06日 10時00分 公開

日野の従業員アンケート、回答したのは「全社員の5人に1人」自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

さて、皆さんはアンケートに対してどのくらい丁寧に協力しますか。選択式の短いものなら、きちんとした企業が実施するものなら、回答者にプレゼントがあるなら……など、人によって基準はさまざまだと思います。

[齊藤由希,MONOist]

 週末ですね。1週間お疲れさまでした。東北や北信越、西日本で記録的な大雨が続きました。先日の深夜、テレビのニュース番組で「今から避難所に行くのは危険です」と各地域に向けて繰り返しアナウンスしていたのが印象に残っています。

 避難の基準が作られたからこそ、そういった注意喚起ができる訳で、逆に言えば基準がなければそのようなアナウンスを聞くことはなかったといえますが、今までにない気候が増えているのを実感します。

アンケート、答えますか

 さて、皆さんはアンケートに対してどのくらい丁寧に協力しますか。選択式の短いものなら、きちんとした企業が実施するものなら、回答者にプレゼントがあるなら……など、人によって基準はさまざまだと思います。

 自身の勤め先が実施する、社員向けのアンケートならどうでしょうか。無記名なら正直に答えるという人もいれば、本音を隠して当たり障りのない回答にとどめるという人、中にはそもそも回答しないという人もいるのかもしれません。それを聞いて会社の何が変わるのか、と思ってしまうと気が進みませんね。とはいえ、会社の危機に物申すチャンスとなるアンケートには多くの人が答えるのではないでしょうか。

 そんなことを考えていたのは、日野自動車の排ガス/燃費試験での不正に関する特別調査委員会の調査報告書を読んでいたからです。すでにご存じの方も多いかと思いますが、日野自動車は2000年代半ばからエンジンの型式認証に必要な試験で不正を続けていました。2022年春にそれが明るみに出て、このほど特別調査委員会が調査報告書をとりまとめて公開しました。

 特別調査委員会では、不正の背景や企業体質を調査することを目的に従業員にアンケートを実施しました。質問項目は次のようなものだったそうです。

  • 今回の不正につながった原因や背景はどのようなものだと思うか
  • 組織の在り方、開発プロセス、組織の風土などの問題点についてどう思うか
  • 今回の不正を契機に、日野自動車にはこれから何が必要で、何を変えていくべきか
  • 同様の不正の再発防止だけでなく、よりよい会社に生まれ変わるにはどうすべきか
  • 特別調査委員会への意見、要望

 アンケートの実施主体である特別調査委員会は全員が外部のメンバーであり、会社で内々に実施するアンケートとは異なります。必要に応じてアンケートの結果を日野自動車や社外に提供する際は、個人が特定されない形に整理するという条件でしたが、所属部署と氏名を記入する必要がありました。

 アンケートの対象は日野自動車の全従業員9232人で、期日までに寄せられた回答は2084件、回答率は22.6%だったそうです。特別調査委員会は「アンケートの内容や形式を鑑みると期待を上回る回答率だった」と言及していますが、個人的にはとても低い回答率だと感じました。

 統計データとしてみれば2000件の回答は十分なボリュームだといえますし、一般的なアンケートでそれだけの回答を集めるのはとてもハードルが高いです。また、なかなか生々しい率直な声が多数寄せられており、ヒアリングの目的は十分に果たしたといえるでしょう。

 それでも、会社が型式取り消しという前代未聞の処分を受けて会社が変わらなければならないときなのに、経営陣や上司にアンケート結果を握りつぶされたり、人事評価で不利益をこうむったりすることを心配する必要がない条件下でのアンケートにもかかわらず、協力したのは5人に1人だったのだな、と思ってしまいました。もっと言いたいことがある人がいてもおかしくないですよね。

 今後、会社が変わっていく上では、このアンケートに回答しなかった8割の人たちの協力も必要です。もし、大多数が今回の不正についてなんとも思っていないのだとしたら、組織の立て直しは大変困難なものになるでしょう(もちろん、8割の人がみんな非協力的で無関心だとは限りません。忙しすぎてアンケートに回答できなかったとか、日々感じている不満や問題点を文章化するのが難しかったとか理由があったかもしれません)。

 このアンケートには、そもそも社内への説明が不十分だという指摘が多く寄せられたようです。「何が起きたのか、どのように会社が復帰するプランを描いているのか知りたい」「犯人を捜すつもりはないが、問題を直視するには事実が必要だ。情報開示を求む。一緒に考えたい」という回答が、調査報告書に掲載されています。

 何が問題視されたのかを知らないと「ウチの部署のこれも問題なんじゃないだろうか」と気が付くことも、そもそも難しいかもしれません。

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