日野がCJPTから除名、2029年末までの大規模プロジェクトは「必要最小限」の関与に電動化

トヨタ自動車や日野自動車、いすゞ自動車、スズキ、ダイハツ工業の共同出資会社Commercial Japan Partnership Technologies(CJPT)は2022年8月24日、日野自動車を除名したと発表した。日野自動車からCJPTへの出資比率は10%だったが、全株式をトヨタ自動車に譲渡する。また、日野自動車は共同企画契約など全ての契約から除外される。

» 2022年08月25日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車や日野自動車、いすゞ自動車、スズキ、ダイハツ工業の共同出資会社Commercial Japan Partnership Technologies(CJPT)は2022年8月24日、日野自動車を除名したと発表した。日野自動車からCJPTへの出資比率は10%だったが、全株式をトヨタ自動車に譲渡する。また、日野自動車は共同企画契約など全ての契約から除外される。

 2023年1月から2029年度末にかけて、東京都や福島県で商用車の電動化とエネルギーマネジメントに関する社会実装プロジェクトが予定されている。物流事業者や小売事業者が参加するとともに、CJPTもこれに全面的にかかわり、大型トラックでFCV(燃料電池車)を、小型トラックでFCVとEV(電気自動車)、軽商用バンでEVを導入し、合計580台の電動商用車を活用する計画だ。

 今回の除名を受けて、このプロジェクトでは「ご迷惑をおかけすることがないよう、日野には必要最小限の役割を果たしてもらう」(トヨタ自動車のプレスリリース)という方針だ。

 除名はCJPTで議論を経て決定したが、トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏から「日野が起こした不正行為はCJPTが共有する思いや目指す道とは相いれない。このまま日野を含めて活動を進めることは取引先や社会から理解を得られないのではないか」との投げかけもあったという。

CJPTを続けたかった日野

 日野自動車の不正は2022年3月に明らかになった。当初は日本向けのエンジン4機種で排ガスや燃費の認証試験に不正があったとしていたが、建設機械など向けのエンジンでも同様の問題が発覚した。また、2016年4月に国土交通省が報告を求めた排ガス/燃費試験の実態調査については、問題なしと虚偽報告していたことも判明した。

 国土交通省は不正が判明したエンジンを搭載した車両の出荷停止を求めており、国内向けの多くの製品が販売できなくなった。その状況ではあったが、将来に向けた種まきとなるCJPTの活動を継続したい意向を示していた。2022年8月3日の会見では日野自動車 代表取締役社長の小木曽聡氏が「今回の不正から多くを学んだ上で、将来に向けた取り組みも進めていきたい。不正の是正もあり、足元にリソースの余裕はないが、将来のお客さまに向けた仕事も重要だ。取り組むプロジェクトを選びながら、社員が集中して取り組めるように気を配っている」とコメントしていた。

 CJPTは2021年4月に発足。商用車でも乗用車と同様に自動運転や電動化、コネクテッドへの対応が求められているが、乗用車と比べて販売台数や売り上げ規模が小さいため、商用車メーカー1社では投資の負担が大きい。そのため、協力が必要だと判断してCJPTの発足に至った。日野自動車といすゞ自動車が協力することで、「日本の商用車ユーザーの8割と向き合うことができる」(豊田氏)という狙いもあった。除名により、当初の“商用車メーカー同士の協力”という目的が薄れた格好だ。

トヨタと日野のコメント

 日野自動車の除名に対する豊田氏のコメントは次の通り。「今回日野が起こした認証試験不正は、全てのステークホルダーの信頼を大きく損なうものであり、日野の親会社としても、株主としても、極めて残念に思う。長期間にわたりエンジン認証における不正を続けてきた日野は、(日本自動車工業会が自動車産業の従事者としてスローガンに掲げる)550万人の仲間として認めていただけない状況にある。現状では日野がいることでご迷惑をおかけしてしまうと考え、CJPTから日野を除名することが適当であると判断し、関係各社とも協議の上、今回の結論に至った。パートナー各社とは引き続き、輸送業が抱える課題の解決や、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指して、プロジェクトを進めていく」(豊田氏)。

 日野自動車が発表したコメントは次の通り。「当社はこれまで、社会課題の解決への貢献を掲げ、さまざまな取り組みを進めてきたが、エンジン認証において長期にわたる広範な不正を行ったという事実に鑑みると、そのスタート地点にさえ立てていなかったと言わざるを得ない。まずは、起こした不正の深刻さおよびその真因を正面から受け止め深く反省し、正すべきを正していく。そして、人流や物流を支えるという商用車メーカーの原点に立ち返り、社会から再び必要としていただける企業として生まれ変わるための変革に、強い覚悟を持って取り組んでいく」(プレスリリース)。

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