実はmutalkの基本コンセプトを考案したのはShiftallではない。パナソニック コネクトのデザイナーである大嶋佑典氏が、パナソニックグループのデザインスタジオであるFUTURE LIFE FACTORY(FLF)に所属していた2019~2020年に発表した「OTODENWA」が基になっている。大嶋氏は「シェアオフィスなどでオンライン会議をする際に、音を漏らさない音声入力デバイスが必要になるのではないかと考えた。そこで関西弁の『音出んわ』とかけてOTODENWAを構想した」と説明する。
OTODENWAはコロナ禍以前に構想したものだが、実際にコロナ禍に入って、大嶋氏が夫婦で自宅内でリモートワークした際には、夫人から大嶋氏のオンライン会議の声が大きすぎることを指摘される経験もあり、OTODENWAのニーズを実感したという。「現在は出社する機会が増えているが、それでも各自のデスクでオンライン会議は頻繁に行われている。そういった環境で他の人の業務にオンライン会議での会話が邪魔にならないようにするという意味でも有用だろう」(同氏)。
そこで、パナソニックグループ内限定のクラウドファンディングライクな社内提案プロジェクト「CALLECT(コレクト)」にOTODENWAを出品し、その製品化にパナソニックグループ傘下のShiftallが手を上げた格好だ。
グローバル展開に向けて製品名をOTODENWAあらためmutalkとしたShiftallだが、2021年からVR/メタバース領域に注力しており、活動リソースの約8割を占めるようになっているという。岩佐氏は「オンライン会議もさることながら、エキサイトした時の声の大きさや利用時間の長さなどを考えると、動画/ゲーム配信やメタバースでのボイスチャットの方がニーズとしては強いのではないかと考えている。8月31日に発表したボディートラッキング装置『HaritoraX』の拡張トラッキングセットも1日で売り切れるなど、需要は大きい。mutalkは日本国内向けから展開を始めるが、今後はHaritoraXと同様に海外展開も進めて、年間数万台の出荷を目指したい」と述べている。
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