DX時代を勝ち抜くビジネスモデルの要件とは?DXによる製造業の進化(3)(3/3 ページ)

» 2022年08月04日 08時00分 公開
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戦略性とは?

 ビジネスを成功に導く上で、目指す姿を描くことは極めて重要です。目指す姿があれば、より戦略的かつ合理的に経営判断を下せます。目指す姿に照らし合わせて、その実現に最適な道を選べばよいからです。

 目指す姿の構想に当たっては、「誰に、どのような価値を、どうやって提供するのか」を明確にすることが基軸となります。優先順位を判断する際の指針として活用できるよう、定義をはっきりさせるべきです。競合他社との違いが分かる内容にすることで、社内の理解を得やすくすることも大切です。

 当然ながら、目指す姿と現状の間にはギャップがあります。この目指す姿と現状の間のギャップを解消するための施策をとりまとめたものが戦略です。そして、戦略を「誰が、何を、いつ実行するのか」というレベルにまで具体化したものは実行計画と呼ばれます。

 目指す姿があっても、そこに至るまでの戦略がなければ「絵に描いた餅」になります。新たなビジネスモデルを実現する上で、適切な戦略を策定することは、目指す姿を描くことと同じくらい重要です。特に、今までにはないビジネスであればあるほど、想定外の事態に陥る可能性は高まります。戦略や実行計画を具体化するだけではなく、当初の計画通りに進まなかったときの対応策を検討しておくべきです。短期的な成果の獲得が見込める施策を先行的に実施するなど、「成功しつつあること」を社内外に発信しやすい計画にすることも有効です。

目指す姿や実行計画を検討する際のフレームワーク 目指す姿や実行計画を検討する際のフレームワーク[クリックで拡大]

検証と再考を繰り返すことの重要性

 ビジネスモデルの検討に当たっては、これらの「需要性」「経済性」「先行者優位性」「競争優位性」「戦略性」という5つの要件をどの程度満たしているのかを基準に事業性を判断します。充足する項目が少なければ、ビジネスモデルを再考すべきです。目指す姿やその実現に至るまでの戦略を練り直すことで、より多くの要件を満たし得るビジネスモデルを思案します。あるいは、特定の項目で抜きん出た存在を目指すことも一考です。

 この検証と再考を何度も繰り返すことによって、真に事業性のあるビジネスモデルを探求することが望まれます。



 さて、本連載では、第1回から今回まで、DXの定義やビジネスモデルの要件などを教科書的に解説してきました。読者の皆さまは、DXは単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新であるということを十分に理解されたと思います。

 しかし、「どうすればビジネスモデルの革新といえるのか」「どのような革新が考えられるのか」を具体に理解するには、実例を知ることが一番です。次回以降、第2回目に解説した「場の創造」「非効率の解消」「需給の拡大」「収益機会の拡張」の4つの方向性に準じてDX時代ならではのビジネスの具体例を紹介していきます。

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筆者プロフィール

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小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。長期ビジョンや経営計画の作成、新規事業の開発、成長戦略やアライアンス戦略の策定、構造改革の推進などを通じてビジネスモデルの革新を支援。近著に、『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)、『サプライウェブ−次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)など。

株式会社ローランド・ベルガーhttps://rolandberger.tokyo/

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