デジタル技術への投資や運営コストは、売上高やユーザー数に直接関係しません。先行的に売り上げやユーザーを増やせれば、その分だけ利幅が大きくなります。加えて、ユーザーやデータが多ければ多いほどユーザーへの提供価値も拡大します。故に、DX時代ならではのビジネスでは、先行者の地位を得ることが大切です。
とはいえ、今までにない「真に新しいビジネス」を生み出すことは容易ではありません。「完全なる新しさ」ではなく、従来とは違う「何か」を作り上げることの方が現実的です。例えば、LINEはSNSとしては後発ですが、スマートフォンへの適応やスタンプ機能の提供などの点において先駆的でした。そのちょっとした「違い」でプラットフォーマーの地位を奪取することに成功したわけです。
先行者となることに成功したとしても、優位性を築けるとは限りません。後発企業の追随を受ける可能性があるからです。従って、追随を防ぐための参入障壁を構築することもポイントです。単に「新しい領域」を見つければよいのではなく、先行者優位性を戦略的に築き上げられるビジネスモデルを描くことが重要なのです。
どのようなビジネスであっても、自社の強みを生かさなければ厳しい競争に打ち勝てません。特に大事なことは、強みを客観的かつ相対的に評価することです。「顧客から評価されているか」「他社よりも優れているか」を冷徹に判別することが求められます。DX時代を見据えたビジネスであることを考えると、「将来も必要とされるか」を見極めることも重要です。
DXは一朝一夕に実現できません。ビジネスが成功したといえるまでに、強力な競合の参入、新しい技術の実用化など、想定外の事態が起こることも考えられます。社長が代わったり、組織体制が変更になったりするかもしれません。そういった事業環境の変化が生じたとき、「自社ならではのビジネスだ」と断固としていえるものでないと、継続が危うくなります。さればこそ、客観的かつ相対的に評価した強みを生かすことが重要なのです。
Amazon.comは、創業後、利益を計上できるようになるまでに7年を要しました。誤解を恐れずにいえば、成功するまで自社のビジネスを貫き続けたからこそ成功したのです。強みを生かしたからといってうまくいくとは限りません。しかし、自社の強みを生かした「ならではのビジネス」といえないと、成功への階段を登りきれないのです。
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