国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。第2回は、DX時代(DXが進んだ未来)にどのようなビジネスが創造されるのか、その方向性を解説する。
前回は、本連載の第1回目ということで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義と4つの進化形態を紹介しました。今回は、DX時代(DXが進んだ未来)にはどのようなビジネスが創造されるのか、その方向性を解説します。
さて、あらためて記すほどのことではありませんが、従来のビジネスの多くは、モノやサービスの提供を通じて対価を得ています。本連載は「DXによる製造業の進化」をテーマとしていますが、製造業は、モノを作ること、売ることで対価を得るビジネスの典型例といってよいでしょう。卸売業や小売業は、モノを売り買いすることで収益を獲得しています。飲食業、運輸業、情報通信業のように、サービスの提供を主とする産業もあります。
これら従来型のビジネスでは、十分なニーズがあること、他社とは異なる価値を有したモノやサービスを提供できることが競争力の源泉となります。DXがどれほど進展しても、モノやサービスの必要性はなくなりません。モノを作ることを価値とする製造業は、今後も、欠かせない存在であり続けるはずです。
DX時代には、モノやサービスの提供ではなく、その取引を支えることを主とするビジネスが増えると予想されます。なぜなら、前回記事でDX3.0として紹介したコーポレートトランスフォーメーションやDX4.0となるインダストリアルトランスフォーメーションに進むことで、企業のビジネスモデルのみならず、業界全体のメカニズムが変容するからです。結果として、モノやサービスの提供手段や方法が多様化し、それを支えるビジネスの必要性や重要性が高まります。
その方向性は、「モノやサービスを取引する新たな“場の創造”」「モノやサービスの取引における“非効率の解消”」「モノやサービスの取引に対する“需給の拡大”」「モノやサービスの取引に付随する“収益機会の拡張”」の4つに大別されます。この「DX時代ならではのビジネス」は、社会に新たな価値と多様性をもたらすだけではなく、産業の革新と経済の持続的な発展にも貢献するはずです。ビジネスの進化をリードする存在といっても過言ではないでしょう。
百貨店やリサイクルショップは、モノを取引する「場」です。飲食店や宿泊施設は、サービスを取引する「場」です。大多数の企業は、これらの「場」を使ってモノやサービスを提供し、収益を得ることをマネタイズの基盤としています。
DXは、今まで取引されることのなかったモノやサービスの提供、共有を可能にします。そのための「場」が新しく創造されるからです。YouTubeをはじめとする動画/画像共有サイトは、その最たる例です。
もう1つの方向性として、DXによるリアルからバーチャルへの転換があげられます。Amazon.comや楽天市場などのECモールは、バーチャルな取引の「場」を構築することで、ロングテールでの商品ラインアップを実現しました。
DXにより新たな「場」が創造されること、バーチャル化されることは、モノやサービスの取引を拡大することにつながります。その価値が大きければ大きいほど、その「場」に対しても相応の対価が支払われます。YouTubeやFacebookといった新たな「場」、Amazonやメルカリといったバーチャル化した「場」を提供した事業者は、その価値の大きさゆえに、飛躍的な成長を実現したわけです。「場の創造」は、社会と経済に新たな価値をもたらすビジネスといって差し支えないでしょう。
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