「DX時代ならではのビジネスモデル」とは?DXによる製造業の進化(2)(2/3 ページ)

» 2022年07月04日 07時00分 公開
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「非効率を解消するビジネス」とは?

 モノやサービスの取引には、営業、広告、調達、発注、在庫、輸送など、さまざまな作業が付随します。メーカーは、モノを作っているだけでは売れません。買い手である利用者からしても、待っているだけでは欲しいモノを手に入れられないのです。

 DXは、その状況に風穴を開けるはずです。モノやサービスの取引における非効率を解消することで、コア業務に集中できる事業環境が生み出されるからです。

 第一に、取引における「本来必要のない作業」をなくします。例えば、素晴らしい製品/技術があって、その存在を知らしめることができていて、QCD(Quality、Cost、Delivery)を誰かが保証してくれるのなら、営業活動は不要になります。受発注先のデジタルマッチングが普及すれば、そういう状況になるかもしれません。

 生産者と小売店、発注者と工場などをダイレクトにつなぐことができれば、取引コストを下げられます。その実現に当たっては、発注/受注要件の明確化、出荷商品の小口での仕分、納品先/委託先の信用力の担保など、中間業者が提供してきた機能をDXにより解消できるかどうかがポイントになります。

非効率を解消するビジネスの例 非効率を解消するビジネスの例[クリックで拡大]

 作業や人手の不要化は、それを担っていた人々にとっては「仕事を失うこと」を意味します。しかしながら、その結果として取引が効率化すれば、経済全体が活性化します。「非効率の解消」は業界全体の構造改革を促進するビジネスなのです。

「需給を拡大するビジネス」とは?

 DXは「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」であるがゆえに、デジタル化を通じて広く多くの情報がつながるようになります。そのモノは、いつ、誰が、どこで使っているのか。そういった情報をリアルタイムに把握し、今までにはない売り方/買い方を提供できれば、モノをより便利に使えるようになるでしょう。

 例えば、モノを「使っていない時間」の間だけ売れるようになったとします。その時間で収益を得なくても支障はなかったわけですから、直接経費に多少の利益を乗せただけの金額で提供しても問題は生じないはずです。使っていない自動車やブランド商品を使いたい人に貸し出せるビジネスは、その典型例です。

モノを「使っていない時間」の間だけ売れるビジネスの事例となる個人間カーシェアリングサービス「Anyca」[クリックで再生] 出所:DeNA SOMPO Mobility

 反対に、モノを「買わなくても使えるようにする」という方向性もあります。洋服を買うのではなく、レンタルするのであれば、新しいファッションに挑戦しやすくなります。似合わなければ返せばよいからです。つまり、モノの利用時間を限定して売れば、使いやすさが高まるということです。

 当たり前のことですが、モノを売るために必要な資金の提供を得られれば、売る人が増えます。同様に、買うために必要な資金を得られれば、買う人が増えます。デジタル技術を駆使して売る人/買う人の行動を追跡し、そのデータをもとに一歩踏み込んだ資金提供を行えるのだとすれば、需給の拡大を後押しするDX時代ならではのファイナンスビジネスといってもよいはずです。

 売り方や売る人、買い方や買う人が増えれば、モノやサービスの取引も拡大します。それだけではなく、選択肢が広がることで、より自分に適した売り方/買い方を選べるようになります。「需給の拡大」は、市場の成長と社会の多様化を推進するビジネスといってよいでしょう。

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