ヤマハと住友商事パワー&モビリティは2022年5月30日、排熱発電によって車両が排出するCO▽▽2▽▽を削減できることを実証したと発表した。これまで活用できていなかった排ガスの熱から電力を回生し、オルターネーターの負荷を軽減したり、エンジン始動時の暖機に排熱を使ったりすることで、CO2排出量を減らす。
ヤマハと住友商事パワー&モビリティは2022年5月30日、温度差を利用して発電する熱電発電によって車両が排出するCO2を削減できることを実証したと発表した。これまで活用できていなかった排ガスの熱から電力を回生し、オルターネーターの負荷を軽減したり、エンジン始動時の暖機に排熱を使ったりすることで、CO2排出量を減らす。
排気量2.0l(リットル)のガソリンターボエンジンを搭載した車両の排気管に排熱発電ユニットと降圧コンバーターを追加し、台上試験でCO2排出量と電力回生量を測定したところ、欧州のWLTPモード走行で最大3.1%(6.4g/km)の削減効果が期待できる結果を得たという。最大回生電力は165Wだった。
また、シリーズハイブリッドシステム搭載車を想定してエンジン回転数を2000rpmで定常としたところ、回生電力はオルタネーターの発電量の40%に相当する195Wとなった。排熱発電システムの追加や試験はFEV Europeに委託した。
排熱発電システムは、触媒下流の排気管に設置しており、エンジン冷却水を排熱発電システムまで分岐して接続させる。ウオーターポンプは車両に既設のものを流用した。降圧コンバーター経由でバッテリーに回生する回路は既存のオルタネーターと並列に接続した。実車両を想定した搭載方法で評価を実施したとしている。
排熱発電システムの内部は、ヤマハが開発したTEG(Thermoelectric Generator、熱電発電)モジュール4つと、排ガス用と冷却水用の熱交換器をサンドイッチ状に積層した構造となっている。
TEGモジュールは2021年3月からサンプル出荷している。モジュールサイズは143×103mm2で「世界最大」(ヤマハ)だという。動作温度は最大400℃、常用300℃まで対応している。モジュールの上下面の温度差が385℃(高温側400℃、低温側15℃)のときに、1モジュールで最大出力143Wを発揮する。自動車での搭載を想定した温度条件で、高温側285℃、低温側100℃の場合は出力が40Wとなる。
従来のTEGモジュールは、熱電材料を上下に対向する2枚のセラミック基板で挟持する構造のため、動作中の温度差でモジュールが破損しやすいのが課題で、大型化や高温での動作が難しかった。ヤマハのTEGモジュールは、熱応力を緩和する構造とステンレスパッケージにより信頼性と搭載性を両立した。自動車での15万kmの走行に相当する負荷にも耐える。
ヤマハと住友商事パワー&モビリティは、自動車の脱炭素の実現において、電動化と内燃機関の高効率化が両輪であると見込む。熱電発電を車載向けに実用化することで自動車の脱炭素実現に貢献したい考えだ。
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