インタビュー
» 2021年11月25日 06時00分 公開

“排ガス測定の堀場”はどのようにCASEに対応するのかオートモーティブ インタビュー(1/2 ページ)

自動車用排ガス測定器で圧倒的なシェアを握る堀場製作所。電動化や自動運転の領域を強化するため、ここ数年で複数の企業を傘下に収めた。どのようにそのシナジーを生かし、自動車産業の変化に対応していくのか。堀場製作所 営業本部 Automotive New Business Development Office 室長の中西秀樹氏に聞いた。

[齊藤由希,MONOist]

 自動車用排ガス測定器で圧倒的なシェアを握る堀場製作所。電動化や自動運転の領域を強化するため、ここ数年で複数の企業を傘下に収めた。どのようにそのシナジーを生かし、自動車産業の変化に対応していくのか。堀場製作所 営業本部 Automotive New Business Development Office 室長の中西秀樹氏に聞いた。

正反対のビジネスの会社も傘下に

堀場製作所の中西秀樹氏[クリックで拡大]

MONOist 2015年に買収したMIRA(マイラ、現ホリバMIRA)と堀場製作所の関わりについて教えてください。

中西氏 マイラは英国政府が自動車産業を底上げする目的で設立した。空軍の滑走路の跡地を活用したテストコースを持つ。立地としては、自動車メーカーの拠点やF1などで使われるシルバーストンサーキットも近い。また、自動運転車が走行可能な開発特区「ミッドランドフューチャーモビリティー」とも近接している。この開発特区では、無人運転を含む自動運転車のテスト走行に高速道路を使うこともできる。

 計測機器の堀場製作所と、開発の上流でエンジニアリングやテスティングを手掛けるマイラは、全く違う事業を持つ正反対の会社だ。堀場製作所は、あるモデルの完成直前に排ガスをはじめとするさまざまな性能を測定してきた。しかし、電動化によって排出削減が進み、ADAS(先進運転支援システム)の拡大などこれまでと違う方向へクルマが進化する流れが加速している。

 そのような中で、トレンドにキャッチアップしているマイラが堀場製作所から見て魅力的に映った。また、2005年に買収したドイツの試験機メーカー・シェンクのトップがマイラに移っており、買収前に堀場製作所に声をかけてきてくれたという、人のつながりによる経緯もあった。

 マイラは歴史的に、車両の評価とそこから派生したエンジニアリングに強みがある。車両の性能評価の結果から、目標に近づけるためにブレーキや加速、ハンドリングなどの設計値にブレークダウンすることができる。自動車メーカーが求める最終的な性能とそれに向けた要件が分かるので、「この評価結果だから、この部品でこの部分の数値を変えるべきだ」と提案できるのが強みだ。

 堀場製作所としては、これまでパワートレインの性能や目標値を見てきたが、それが車両全体としてどうなるか、勘所がなかった。こうした車両全体に対する知見を獲得できることで、パワートレインの開発でも車両としてのパフォーマンスを見た提案や改善を進められるようになる。

MONOist 車両目線のエンジニアリングはどのように求められていますか。

中西氏 中国や欧州では新興自動車メーカーが増えており、自動車に参入したい異業種のプレイヤーも同様だ。既存の自動車メーカーも変わろうとしている。そのどちらにおいても、車両目線のエンジニアリングが必要とされている。どのフェーズで必要とされるかを見極めていかなければならない。

 マイラがトルコ発のEVメーカーやイスラエルのREEの開発を支援するなど、具体的な活動も進んでいる。自動車メーカーだけでなく、サプライヤーも部品や技術が車両全体にどう影響するかを把握しようとしている。日本のサプライヤーからも「このシステムを載せると車両としてどうなるか検討したい」という話をいただいている。

MONOist 買収した企業とのシナジーはどのように生まれていますか。

中西氏 全く違うフェーズでビジネスをやってきた会社同士なので、2015年に買収して以降、まずはお互いのことを知る必要があった。単純に製品とサービスを掛け合わせるのは難しかった。

 まずは、堀場製作所の製品を使ってマイラが認証試験を含めたテストを行う形で、協力して排ガス測定に取り組んできた。環境室に四輪駆動のシャシーダイナモを設置し、条件を変えながら測定できるようにした。また、マイラはRDE(Real Driving Emission、路上走行試験)の受託試験や認証を行っていて、堀場製作所はRDE向けの分析器を手掛けていた。それぞれの知見を融合して改善に努めてきたという経緯もある。

 バッテリー評価設備についても、シナジーが生まれている。マイラでは当初、他社製のバッテリー評価設備を使っていた。堀場製作所がバッテリーや燃料電池の計測機器を手掛けるFuelCon(フューエルコン)を2018年に買収。バッテリーセルの状態を1mV単位の精度で評価できる設備がラインアップに加わった。マイラでのバッテリー評価設備の使い方を取り入れながら、フューエルコンの製品を改良してきた。バッテリー評価に必要な設備のスペック、大きさ、機能、安全対策などにマイラの知見が生かされている。

 電動車の駆動用モーターの評価には、ダイナモメーターで対応している。電動車に求められる要件はマイラがよく知っている。知見を生かして、堀場の製品のシステムに付加価値をアドオンしながら領域を広げていく。

「HORIBA BIWAKO E-HARBOR」(滋賀県大津市)には、電動車やバッテリー、駆動用モーター向けの評価設備があり、設備の貸し出しや受託評価を行う。写真左は電圧1000Vのバッテリーにも対応した設備。旧フューエルコンが強みとする分野だ。モーターとバッテリーの評価設備が連携し、車両としての動作を想定した評価も可能だ(左)。シャシーダイナモでEVの走行距離の評価などを行う(右)[クリックで拡大]
燃料電池向けの評価設備も、フューエルコンの得意分野だ(左)。水素が漏れた場合を想定した部屋の設計や換気なども一貫して堀場製作所で手掛けられる(右)[クリックで拡大]
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