市販車ベースのマシンで戦う国内最高峰の耐久レースであるスーパー耐久シリーズ。2021年シーズンから自動車メーカーの開発車両が参加可能な「ST-Q」クラスが新設され、他のレースカテゴリーに先んじて次世代燃料を使ったレースが行われている。
2022年シーズンは、2021年に引き続きトヨタ自動車が水素エンジン車「カローラスポーツ」で参戦している。水素エンジンの特徴は、航続距離が短いというデメリットはあるものの、既存の内燃機関エンジンの機構が流用でき、燃焼時にCO2をほとんど排出しないことにある。トヨタは昨シーズンの24時間レース(富士スピードウェイ)から参戦を開始。以降、レースごとに改良を加え、速い燃焼速度に伴う異常燃焼の制御や燃料噴射のコントロール、点火タイミングなど水素ならではの技術課題の解決に取り組んでいる。
また、トヨタはスバルとともにカーボンニュートラル燃料を使った「GR86」「BRZ」でも参戦している。両マシンとも燃料は同じだが、86は水素エンジンカローラのものをベースにした排気量1.4lのターボエンジン、スバルはベース車の排気量2.4lの水平対向エンジンを搭載する。同一燃料に対して2種類のエンジンを使い分けることで、カーボンニュートラル燃料に対応するエンジン開発を加速させる狙いだ。
マツダは、ユーグレナのバイオディーゼル燃料「サステオ」を使った「マツダ2」で参戦している。サステオの原料は使用済み食用油と微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)だ。食用油の原材料となる植物もミドリムシも、その成長過程で光合成によってCO2を吸収する。そのため、燃料燃焼時にはエンジンからCO2を排出するが、カーボンニュートラルを実現する燃料として期待されている。
モータースポーツにおける環境対応を巡っては、すでにF1やWEC(世界耐久選手権)といった世界選手権のみならず、その他のさまざまなレースカテゴリーでエネルギー回生システムを搭載した電動パワートレインが採用されるなど、電動化の流れが加速している。
国内の最高峰カテゴリーでも、将来的な電動パワートレインの導入を視野に入れた検討が進められる一方、同時進行で、カーボンニュートラルに寄与する電動化以外の選択肢を増やすための技術開発も展開されている。スーパーフォーミュラ、スーパーGT、スーパー耐久における取り組みは、まさにその好事例であり、モータースポーツの「走る実験室」としての役割はカーボンニュートラル対応でも発揮されることになりそうだ。
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