JPRがネクスト50プロジェクトを始めたのは、危機感の裏返しでもある。スーパーフォーミュラは1973〜1977年にかけて行われた「全日本F2000選手権」をルーツにし50年の歴史をもつ。ただ、国内トップフォーミュラとしての歴史と伝統だけでは、大変革期を迎えた自動車業界の中で持続的なレース開催が困難になると見ている。脱炭素化に向けて自動車業界を取り巻く環境が大きく変化する中、スーパーフォーミュラもまたカーボンニュートラル対応を押し進めることで、次の50年も自動車社会とともに歩むための基盤を整えていく必要があると判断した。
国内GTレースの最高峰であるスーパーGTも、カーボンニュートラル対応のファーストステップとして、2023年シーズンからカーボンニュートラルフューエルの導入を決めた。同時に、マシン走行時のCO2排出量を削減するため、レギュレーションも見直す方針だ。
プロモーターのGTAは、来シーズンから全ての参戦マシンが使用するカーボンニュートラルフューエルとして、ドイツのハルターマン・カーレス製の「ETS Renewablaze GTA R100」を採用することを決めた。このカーボンニュートラルフューエルは、ハルターマン・カーレスのイギリス拠点で製造され、GTAが来シーズンに使用する約30万l(リットル)を船便で輸入する計画となっている。
カーボンニュートラルフューエルは、セルロース(植物ごみ)から生成された炭化水素と酸素含有物から作られる。CO2を吸収した植物由来の原材料を用いることで、CO2を排出する燃料を生成しCO2を相殺する仕組みだ。性状やオクタン価は日本の自動車ガソリンの要求品質「JIS K2202:2012」規格に適合しており、GTAによると、トヨタ自動車が事前に行ったエンジンベンチテストの結果として、理論空燃比(ラムダ)合わせや点火時期の調整、温度対応などを図れば、既存の無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)と遜色ない性能が発揮できることが確認されたという。
GTカーが走行時に排出するCO2の低減にも取り組む。GTAはレギュレーションについて、エンジンの燃費性能とタイヤのライフ性能を高める方向へと見直す。来シーズンから1大会に持ち込めるタイヤ本数を削減する計画にしており、今シーズンはその事前準備として一部の大会のレース距離を450kmに長距離化。より長持ちするタイヤ、より低燃費のマシンがレースに勝てる車両規則に変更することで、マシン走行時のCO2排出量の低減を実現していく。
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