島津製作所と東京工業大学は、実用可能な発光酵素として世界最小となる分子量13kDaの「picALuc」を開発した。高い発光活性と熱安定性も有しており、創薬スクリーニングや診断、検査などでの応用が期待される。
島津製作所は2022年4月25日、実用可能な発光酵素として世界最小となる分子量13kDaの「picALuc(ピカルック)」を開発したと発表した。東京工業大学との共同研究による成果だ。
発光酵素は、発光物質が光を放つ化学反応を触媒する酵素で、自然界ではホタルやイカなどでよく知られている。発光生物の遺伝子を用いて作製した人工的な発光酵素もあり、細胞内の標的タンパク質の位置や発現量を可視化するレポータータンパク質として利用されている。
レポータータンパク質として利用する発光酵素には、明るさと熱安定性のほか、サイズが小さいことが求められる。サイズが大きいと、標的タンパク質の挙動が阻害されたり、標的と発光酵素の融合タンパク質の構造が正しく生成されなかったりといった問題が生じるためだ。
picALucは、分子量21KDaのカイアシ類由来発光酵素「ALuc」を基に、発光活性に影響を与えないタンパク質構造を13kDaサイズまで削り、世界最小サイズとなった。
明るさについて、哺乳類由来培養細胞であるCos-7細胞を用いて作製したpicALucの発光値を調べたところ、既存の発光酵素の中で最も高い発光活性を持つALucやトゲオキヒオドシエビ由来の「NanoLuc」と同等だった。
熱安定性は、picALucを80℃で10分間加熱したときの発光値が80%で、37℃で24時間加熱した後もほぼ100%を維持していた。レポータータンパク質としてよく使用されるホタル由来発光酵素「FLuc」は、60℃で5分間加熱すると完全に発光しなくなるため、それに比べるとpicALucは熱に安定的といえる。
また、汎用的な分子間相互作用検出法のBioluminescence Resonance Energy Transfer(BRET)based assayにpicALucを用いると、NanoLucよりも高い応答を示した。
picALucは、創薬スクリーニングや診断、検査などでの応用が期待される。同社は既に大腸菌を用いてpicALucの大量作製に成功しており、2023年の製品化に向けて、picALucの改良や用途開発に協力してくれる機関、企業にサンプルを提供している。
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