早稲田大学は、防衛医科大学校と共同で、生体組織表面にシールのように貼り付けられる体内埋め込み型の発光デバイスを開発した。同デバイスを光がん治療に応用し、マウス体内の腫瘍を消失させることに成功した。
早稲田大学は2018年7月17日、生体組織表面にシールのように貼り付けられる体内埋め込み型の発光デバイスを開発したと発表した。同デバイスを光がん治療に応用し、マウス体内の腫瘍を消失させることに成功した。同大学高等研究所 准教授の藤枝俊宣氏らと防衛医科大学校との共同研究による成果だ。
研究では、柔かく伸縮性に優れるシリコーン製の高分子ナノ薄膜(厚さ約600nm)の表面に、生体模倣型接着分子(PDA:ポリドーパミン)をコーティングした。これにより、厚さがmm単位のシリコーン薄膜と比較して生体組織への接着性が25倍向上。小型デバイスを縫合なしで、生体内に2週間以上にわたり安定して固定することに成功した。
また、無線給電式のLEDチップ(赤および緑)を担がんモデルマウス体内の腫瘍直下に固定し、無線給電アンテナを用いて10日間連続的に点灯させたところ、腫瘍が消失した。
同デバイスは、移植時に縫合する必要がないため、重要な血管や組織、構造的にもろい組織にも適用できる。このため、これまで光線力学療法は困難とされてきた深部臓器がんなどへも適用範囲を広げることができる。また、光源を腫瘍の間近に設置できるため、従来型の光がん治療で用いるレーザー光の1000分の1という弱い光のLEDでも腫瘍を消失可能だ。光が弱いことから、レーザー光照射による組織温度の過剰な上昇や、周りの臓器の熱障害から生じる副作用も原理上は起こらない。
さらに、デバイスを体内埋め込み型にしたことで、緑色光による光がん治療が可能になった。治療効率の高い緑色光は、組織透過性の面からこれまで使用が難しく、世界に先駆ける成果だという。
同デバイスを用いた光がん治療は、患者への負担を軽減する次世代型のがん治療法として、今後の応用が期待される。
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