IoTを軸に製造業DXを進める4つのステージ、そしてはじめの一歩製造業DX基礎解説(1/4 ページ)

製造業でも求められるようになっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。本稿では、IoTを軸とした製造業におけるDXの進め方を4つのステージに分けて解説する。また、製造業DXのはじめの一歩となるIoTで効果を得るための2つのポイントも紹介する。

» 2022年01月24日 10時00分 公開

 製造業においても、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などのテクノロジー活用や、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を使うことが当たり前になってきました。一方で、以前からM2M(Machine to Machine)やFA(ファクトリーオートメーション)などのデジタル技術による自動化に取り組まれてきた方々にとっては、過去15年間の取り組みとDXの何が違うのか、疑問を持たれる方もおられるかもしれません。

 そこで本記事では、IoTを軸とした製造業におけるDXの進め方についてご紹介していきたいと思います。

デジタルなしのトランスフォーメーション?

 経済産業省「DX推進指標」とそのガイダンスにおいて、DXは以下のように説明されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

経済産業省「DX推進指標」とそのガイダンス(2019年7月発行)

 上記の定義を読んでみると、DXは決して新しい概念ではありません。実際、歴史をひもとけば、デジタルなしのトランスフォーメーションは幾つも見つけることができます。

 例えば、江戸時代の「米相場の手旗信号」は、トランスフォーメーション事例です。当時、滋賀県の大津では、大阪の米の相場に関する情報を飛脚が伝達し、1日遅れの情報に基づいて商売されていました。もっと早く情報を得ることができれば、もっと有利な商売ができるという強い思いから始まったのが、街道上にやぐらを建設し、その上に立った人が手旗で連携して相場を伝達する「手旗信号」です。その結果、当日中に情報を得られるようになりました。情報伝達の方法を変革することで、明らかに競争力の優位性が確立したわけです。

 近年の事例では、2000年前後から急速に広がったECサイトがあります。このケースは、デジタル化の成果を得ているのでDXといえるでしょう。当時、紙カタログから選んで、葉書などで購入申し込みをしていた通販を、デジタル化しWebサイトに移行することで、最新の情報、大量の商品から選んで、必要なときにすぐに購入できるようにしました。

 これら2つの事例の共通点は、物理的制約を「通信」を用いて変革しているという点です。先ほどの手旗信号の例では人の移動速度を、ECサイトの例では紙のカタログと葉書という物理的な課題を解決することで、新たな競争優位性を獲得しています。

 この考え方は、昨今のDXにも十分に当てはめて考えることができ、M2MやFAが目指す自動化と異なる点です。

成功プロジェクトから見えてきた、DXを進めるための4つのステージ

 筆者が所属するソラコムはセルラー通信を軸にIoTプラットフォーム「SORACOM」を提供する会社です。すでに2万を超えるお客さまが、SORACOMを活用してIoTに取り組んでいます。お客さまに事例に関するお話を伺う中で、成功しているIoT活用プロジェクトには4つのステージがあることが見えてきました。

IoTを活用したDXの4つのステージ IoTを活用したDXの4つのステージ[クリックで拡大]

 昨今、DXとともにIoTやAIなどの技術キーワードを耳にします。それぞれの技術キーワードは万能にDXを実現するわけではなく、それぞれ使うべきステージがあります。以降のページで、技術キーワードとDXのステージを整理しながら、実際の活用事例をご紹介します。

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