「ステージ3」では、蓄積したデータを分析しパターン化し、システム側が人に代わってデータに基づく意思決定を行ったり、一部のプロセスの自動化やリモート制御を行えたりするように計画していきます。このように大量のデータを分析し、洞察を得るときに必要な技術がAIや機械学習です。また、複数のデータを重ね合わせて管理する際には、BI(ビジネスインテリジェンス)やダッシュボードといった技術も必要になります。
ここからは、ステージ3まで到達している具体的な事例を見ていきましょう。
AGCは、タンク在庫管理システムにより、「ステージ1」でタンク内燃料の検尺をセンサーによってデジタル化し、「ステージ2」でデータを蓄積し、検尺結果を自動的に記録するようにしました。そして、「ステージ3」では、データを分析し、ある一定の状況になった場合にシステム側で自動的に判断して、材料の発注を行うようプロセスを自動化しました。
このように、従来人が行っていた判断をシステムに任せることは、現場の熟練技術者の知見を可視化し、組織のナレッジとすることができる他、定形業務をシステムに任せて、人でしかできない業務に人員を集中させることにつながります。
ダイキン工業では、これまで作業員が人手で行っていた、オフィスビルの天井取り付けの空調機の定期点検をデジタル化しました。「ステージ1」では、空調機内部に設置された定点カメラにより、リモートから内部の状況を把握できるようにし、「ステージ2」では、その画像を分析しメンテナンスの必要性に関する知見を蓄積します。そして、「ステージ3」では、AIで分析し、システムが清掃時期を自動判定できるようにしています。これにより、現場に行くことなく状況を把握し、清掃が必要なところから効率的にメンテナンスを行えるようになります。
この事例では、今まで多数の作業員が「見る」ことで判断していた知見を、システムが全ての映像を分析して「判断する」ことによって代替しています。大量のデータを全て見なければ得られなかったかもしれない知見も、この方法であれば考察を深めていくことができます。
このように特定の業務でのDXによる最適化が進んでいくことで、次に見えてくるのが「ステージ4」です。これは複数の業務のDXや、DXが進んでいる企業間による組み合わせによって、今までできていなかった全く新しいやり方が生まれる「新価値創造」のステージになります。
日本瓦斯(ニチガス)では、100万軒を超える利用者のスマートメーターに、ネットワーク搭載の検針デバイス「スマート蛍」を取り付け、ガスメーターのリアルタイム検針を実現しています。検針員の月1回の訪問という業務を削減するとともに、代わりに毎日のガスのリアルタイム利用状況のデータを得られるようになりました。
ニチガスでは、スマート検針で得られたデータを、ガスの充填(じゅうてん)工場や、ガスボンベの配送にも役立て、最適化しています。加えて、同時期に利用者のガス利用に関する手続きもデジタル化。今では、利用者はスマートフォンアプリ「マイニチガス」で、日々のガスの利用状況を閲覧できる他、ガス料金の支払いもスマートフォンによりキャッシュレス決済で行うことができます。
さらに、これらの活動の相乗効果で、人手を要していた営業所業務を大幅に削減できます。利用者に関する情報がデジタル化し、ペーパーレスとなれば、現地にいなくても顧客のサポートが可能になるからです。
このように、スマート検針を皮切りに、配送、営業所、顧客体験という異なる分野のビジネスプロセスが進化しました。ニチガスでは、さらに他業種とのデータ連携による効率化を視野に入れています。
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