その前にはりの体積を求めます。体積は式32で表されます。
ここで式33に示すような関数g(n,a)を導入します。
体積がVoと等しくなるという条件は、g(n,a)=0が成立するということになります。
g(n,a)=0が成立し、コンプライアンスが最小になるようなはりの形状を求めるという問題は、数学では次式で表現します。
見慣れない記号ℜが出てきましたね。ℜは「実数全体」という意味で、nとaは“実数の範囲で見つけてください”ということになります。そりゃそうですね。nとaが複素数でしか解がないとなると都合が悪いですね。f(n,a)を目的関数、g(n,a)を制約関数といいます。
それと、「体積は小さい方がいい!」といって、少し欲張って式35を式36に変えるようなことはしません。こうすると「Karush-Kuhn-Tucker条件(KKT条件)」というものを導入しなければならず話が難しくなります。本連載では、制約関数には等式を使うことにします。
次回は、「ラグランジュの未定乗数法」を使って、コンプライアンスが最小となるようなnとaを求めます。どのような結果となるでしょうか。Wikipediaの説明(参考文献[2])で十分ですので、少し予習していただければ幸いです。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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