デジタルツインを実現するCAEの真価

パラメトリック最適化に挑戦するフリーFEMソフトとExcelマクロで形状最適化(2)(2/4 ページ)

» 2022年01月19日 11時00分 公開

関数の極大値と極小値

 「何をいまさら」なのですが、関数の極大値と極小値を求めましょう。例えば、下に凸の関数(y=f(x)=x2など)の極小値は、関数を微分することで求まります。極小値になる条件は以下でしたね。

式9 式9

 y=xnの場合は、式10となります。

式10 式10

 少し余談になりますが、式10は1684年にライプニッツによって証明抜きで発表されましたが、次の積分の式はその20年ほど前にヨーロッパの数学者の間で知られていました(参考文献[1])。積分の方が早かったのです。

式11 式11

参考文献:

  • [1]志賀浩二/数学の流れ30講(中)/朝倉書店(2019)

 式10式11は、これから多用していきます。

 以下に、凸の関数の極小値の例を示します(図4)。

凸関数の極小値 図4 凸関数の極小値[クリックで拡大]

 では、変数がたくさんある場合を考えましょう。先ほど変数を座標xとしましたが、座標だとy、zと変数が3つで終わりなので、x、y、zの代わりに、ρ1、ρ2、ρ3、ρ4、ρ5……ρmとしましょう。これらの変数は、図1のC1、C2、C3などに相当した設計変数で、設計変数はm個あります。図2の片持ちはりの場合、m=2、ρ1=n、ρ2=aとなります。

 ある関数f(ρ1,ρ2,ρ3……)があるとし、その極小値ないしは極大値となり得るρ1、ρ2、ρ3……はどうやって求めるのでしょうか。次に示す連立方程式を解くことによって求めます。連立方程式は設計変数の数だけ(m個)あります。

上から式12-1/式12-2/式12-m 上から式12-1式12-2式12-m

 偏微分の記号∂が出てきました。式12-1の場合、ρ1を変数としてρ1だけで微分し、ρ2以降を定数として扱います。つまり、定数の微分なのでゼロとなります。極小値は図5のようになります。最適化問題でよく見かける図ですね。

下に凸の関数の極小値 図5 下に凸の関数の極小値[クリックで拡大]

剛性最大化、コンプライアンス最小化

 形状最適化の文献には「剛性最大化」という表現ではなく、「平均コンプライアンス最小化」という表現が使われています。コンプライアンスは、ばね定数の逆数なので、剛性最大化問題は平均コンプライアンス最小化問題となります。コンプライアンスfは式13で定義されます。

式13 式13

 力×変位(移動量)になるので、仕事量[J]と同じ単位となります。ばね定数k[N/m]を導入しましょう。変位uは、荷重Wをばね定数kで割ったものなので、式13は次式となります。

式14 式14

 分母にばね定数kが出てきたので、コンプライアンスはばね定数の逆数となります。では、W=kuを代入しましょう。

式15 式15

 ばねに蓄えられるエネルギーEは式16だったので、コンプライアンスはばねに蓄えられるエネルギーの2倍ですね。

式16 式16

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