一時的にはこれらの取り組みでしのげても、COVID-19の変異株の拡大や地政学上の問題は生まれ続ける。そこで2022年はこれらの混乱の影響を少しでも抑えられる体制作りへの動きが活発化する見込みだ。
方策の1つになるのが、サプライチェーン管理のさらなる強化である。既に日本の製造業では、東日本大震災やタイの洪水などさまざまな災害の経験から、サプライチェーンの管理および、2次、3次サプライヤーの管理などを進めてきているところも多い。これらを土台としつつ、変化に即応する柔軟性を強化することが求められている。
ポイントはリアルタイム性だ。製造業のサプライチェーンのグローバル化が進み、世界中のあらゆる異変の影響をサプライチェーンが受けるようになった。グローバル化が進めば進むほど、サプライチェーンそのものは脆弱になる。さらにこうした異変を全て予測することはほぼ不可能である。そこで、変化の予兆をより早くつかみ、これらに対応する即応性が必要になる。そのためには、従来のように人手を介して情報を集めるのではなく、異変が生まれる現場の最前線の情報をリアルタイムで収集し、さまざまな判断を行えるようにするのが理想だ。
例えば、企業単位ではSCMシステムでは一元的に管理していても、工場や物流の現場で部品がどのようなステータスにあるのかを把握できていない場合は多い。現場ではExcelなどで個々に管理し、システム間の情報連携では人手で入力するという場合もよく見られる。こうした現場に散在するデータを自動で一元的に把握できるような仕組みを作り、現場での変化を把握できる「高度なサプライチェーン管理」を実現することが求められている。
既に大手自動車メーカーでは、サプライヤー管理をより深くまで行う動きが活発化しており、これらの情報を一元的に管理する動きの強化も進んでいる。まずは物流現場や製造現場などでデータ化ができていない領域のデータ化をコード定義なども含めて進めるとともに、これらを収集する仕組み、見える化して活用する仕組みを1つ1つ作り上げていく動きが広がる見込みだ。
同様に、急な設計変更や生産工程変更に対応していくには、サプライチェーンとエンジニアリングチェーンのシステム連携なども求められる。代替部品の採用などを判断し、設計変更と生産工程の検証および変更のリードタイムをできる限り低減していくことが、変化に対応するための柔軟性確保につながってくるからだ。そのためには、リアルでの検証などの工程をできる限り減らし、デジタル空間上で行えることをできる限りデジタル上で自動で行えるようにしていくことが必要となる。
ここまで見てきたように、これらの動きは今回のCOVID-19で初めて生まれた動きではなく、インダストリー4.0やスマートファクトリー化、製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)などの文脈で訴えられてきた取り組みである。以前から指摘されてきたこれらの取り組みの必要性が、COVID-19およびサプライチェーン混乱の動きで顕在化したということがいえる。2022年は、一時的対処策を粛々と進める一方で、これらのデジタル化の動きをさらに加速させ、今後も続くサプライチェーン混乱の影響度を下げる動きが広がる見込みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.