syncはライトやマイク、Rasberry Piなどを内蔵したタワー状の作品で、会話中の「ありがとう」という言葉に反応して明るく光る。目に見えないが普段何げなく使われる言葉をデジタル技術で可視化する。「人間やモノとのインタラクションを通じて、新しい形の空間演出につなげたい」(制作担当者)という意図に基づいて開発された。
tangibleは電子マネーの残額を可視化するデバイスである。ICカードなどをタッチさせるとデバイスが上下に動き、残額のおおよその金額感を伝える。
tangibleを制作したパナソニック イノベーション推進部門 デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORYの川島大地氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり電子マネーによるキャッシュレス決済が普及しているが、一方でアナログなお金から離れることで、どのくらい使ったかなどが把握しづらくなる。デジタルのお金を物理量で可視化する仕組みがあればと考えた」と語る。
balanceはスマートフォンで記録した2種類のデータを比較し、てんびんのオブジェクトで表現するというコンセプトの作品である。例えば「睡眠時間」と「スマートフォンの操作時間」や、「走った時間」と「摂取カロリー」などを比較できる。どちらか一方に偏りがあれば、オブジェクトのはかり部分も傾く仕組みだ。
開発意図について担当者は「スマートフォンにはユーザーから取得したデータが蓄積されており、さまざまなサービスに活用されている。一方でユーザーが自身のデータを使ってアウトプットできる機会は少ない。データを利用できる環境を作りたいと考えた」と話す。
safeは官公庁や自治体などのオープンデータを基に、装着者の支援につながるサービスを提供するというコンセプトで開発されたストラップ型のデバイスだ。例えば、特定地域の交通事故のオープンデータを使えば、装着者が過去に事故が多発した場所を向いた際に、safeのGPSで検知して警告音を鳴らすことも可能になる。
制作担当者は「ビジネスシーンでは企業によるデータ活用が増えているが、個々人がオープンデータを利用する例はまだ少なく、そのインタフェースになるデバイスとしてsafeを考案した」と説明した。
川島氏は今回の展示をはじめとした取り組みを通じた展望について、「FLFはパナソニックの中で一番とがったアイデアを出していけるチームでもある。社外に対してのメッセージ発信、ブランディングも大切だが、社内に対しても『こうしたアイデアも(当社では)受け入れられるんだ』と示すことで、事業の幅をより広げていけるのではないかと考えている」と語った。
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