パナソニックは「他人のためのモノづくり」を促進するモノづくりプロジェクト「D+IO」を展開中だ。GitHub上に公開された「レシピ」を基に、役立つ電子工作デバイスを自作できる。これまでに「CO2換気アラートデバイス」と、ハムスターなどの健康管理が行える「小動物ヘルスケアデバイス」のレシピを公開した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による自粛期間に前後して、国内外でマスクの大規模な品不足が生じたことは記憶に新しい。こうした状況下で生まれたのが、マスクやフェイスシールドなどの不足しがちな物資をDIYで補完しようとするモノづくりの活動だ。
その中でも特に目立ったのが「自分のためのモノづくり」にとどまらない、「他人のためのモノづくり」である。手作りマスクやフェイスシールドを友人や医療現場に無償提供するといった活動はその一例だろう。
こうした「他人のためのモノづくり」というムーブメントの存在に着目し、拡大を後押しするプロジェクトがある。パナソニックが推進するモノづくりプロジェクト「D+IO(ドゥーイングアイオー)」である。
D+IOは身の回りの素材や市販の電子部品を使ったモノづくり文化の促進を目指すプロジェクトだ。ソフトウェア開発プラットフォームであるGitHub(ギットハブ)上でソースコードや配線図、組み立て手順などの「レシピ」を無償公開して、日常で役立つプロダクトを自作できる環境を多くの人に提供する。
レシピの説明文は、非エンジニアでも理解しやすいレベルの内容で記載されている。また、ソースコードを読めなくてもソフトをダウンロードすればデフォルト機能は使えるので、非エンジニアでも取り組みやすい。
D+IOがこれまでに公開したレシピは2つだ。第1弾は2020年6月に公開した「CO2換気アラートデバイス」である。CO2センサーが空気中の二酸化炭素濃度を測定して、厚生労働省が換気の目安として定める1000ppm以上の基準値に達するとLEDが発光して換気のタイミングだと知らせる。LEDではなく、スピーカーを通じてアラート音を鳴らして通知することも可能。通知を出す基準値は任意に変更可能だ。トイレットペーパーの芯などでセンサーカバーを作れば、インテリアとして部屋内に違和感なく設置できる。
パナソニック イノベーション推進部門 デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORYの川島大地氏は「同デバイスを室内の適切な場所に設置すれば、換気のタイミングに気付きやすくなり、いわゆる『三密』状態も防止できる。結果としてCOVID-19の感染リスクを減らす可能性もある」と語った。
2020年9月には第2弾として、「小動物ヘルスケアデバイス」を公開した。ケージに汎用マイコンやモーションセンサー、湿温度を計測する環境センサー、赤外線センサー、ドアスイッチ、体重測定機などを設置することでペットの活動量を計測する。例えばハムスターを飼育している場合は、赤外線センサーで巣箱から出入りした回数を、ドアスイッチで回し車の回転数などを記録できる。活動量はマイコン上でリアルタイムで表示される。
収集したデータを普段の活動量と比較することで、健康状態に問題がないかも確認できる。例えば、回し車の回転数が普段と比べて少ない場合は、数値とともに「困り顔」の絵文字が表示される。反対に、回転数が多い場合は「笑顔」が表示されるなど、ペットの調子を視覚的に分かりやすく伝える。なお、データはクラウド連携にも対応しており、スマートフォンを使えば遠隔で確認可能だ。
川島氏は「ステイホーム期間中にハムスターや小鳥などの小動物をペットとして飼う人が増加した。しかし、犬や猫向けのヘルスケアデバイスなどは多く市販されているが、小動物向けの製品はほとんどない。市場が狭くてビジネスとして成り立たないからだ。小動物ヘルスケアデバイスは健康状態を厳密に測定するものではないが、健康異常についていくらかの気付きを得る手立てにはなるだろう」と語る。
制作費用の目安は、CO2換気アラートデバイスは5000円前後、小動物ヘルスケアデバイスは1万円前後という。
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