パナソニックは、2019年4月にイノベーション推進部門内に立ち上げた新組織「デザイン本部」の事業方針について説明。同本部傘下となったFUTURE LIFE FACTORYの新たな取り組みとなるスマート知育玩具「PA!GO(パゴ)」も紹介した。
パナソニックは2019年7月12日、東京都内で会見を開き、同年4月にイノベーション推進部門内に立ち上げた新組織「デザイン本部」の事業方針について説明した。デザイン本部トップの本部長には、2017年1月からアプライアンス社のデザインセンター長を務め、2019年1月にパナソニック全社のデザイン戦略を統括するデザイン戦略室の責任者になっていた臼井重雄氏が就任。会見に登壇した臼井氏は「企業にデザイン経営が求められる中で、デザインの役割をもう一度見直すべく、この4月に本社組織としてのデザイン本部を発足させた」と語る。
パナソニックがインハウスのデザイン部門を立ち上げたのは1951年。「日本企業としては最も早い取り組みだった」(臼井氏)という。その後も、グッドデザイン賞、レッド・ドット・デザイン賞をはじめ国内外のデザイン賞を受賞するなど、そのデザイン力は高く評価されている。
ただし、経済産業省や特許庁が国内企業に薦める「デザイン経営」や、パナソニックも取り組んでいる「デザイン思考」に代表されるように、デザインには色や形を作るという旧来の形にとどまらない役割が求められるようになっている。また、デザイナーには、顧客の潜在ニーズの発見を主導する「インサイト」、コトバにならないモノを形にして開発サイクルを加速する「ビジュアライズ」、素早く世に問い、フィードバックを繰り返しながらブラッシュアップする「アジャイル」などの能力がある。臼井氏は「これらの能力は未来が不確実な市場において特に有効に働くので、経営という観点でも大きく役立つ」と述べ、デザイン本部として経営にも関わっていく方針を示した。
同氏がパナソニック社内でデザインの役割を広げていく上で重視するのが、「気づく」「考える」「つくる」「伝える」の4つから成るイノベーションを起こすデザインプロセスだ。これまでパナソニックのデザイナーの多くは、色や形を作ることを専門にしてきたため「つくる」に関わる人材が一番多い。「例えば炊飯器であれば、今まではより良い炊飯器を作ればよかった。デザイン本部としては、そもそも炊飯器とは何かといったように、あらためて炊飯器を定義するところまで考え、『つくる』以外の3つを行えるように人材を強化しているところだ」(同氏)という。
新組織となるデザイン本部の傘下には、デザインマネジメント、アプライアンス社としての取り組みだった新領域の先行開発を行う組織「FUTURE LIFE FACTORY」、ライフソリューションズ社内にあった「スペース&メディア創造研究所」という3つの組織がある。そして、このデザイン本部が全体のブレーンとなり、アプライアンス社、ライフソリューションズ社、コネクティッドソリューションズ社、そして2019年4月に新たに発足した中国・北東アジア社のデザインセンターと連携しながら、デザインに関わる活動を横串を通して進めていく。
デザインセンターを持たないオートモーティブシステムズ社、インダストリーシステムズ社、US社との連携については「デザイン本部から直接支援する他、オートモーティブシステムズ社で扱う製品の一部はコネクティッドソリューションズ社のデザインセンターが担当しているのでこれは継続する。今後も、全てのカンパニーや事業部と、大きな枠組みでのデザインという観点で連携していきたい」(臼井氏)としている。
なお、デザイン本部の中核拠点は、アプライアンス社のデザインセンターと同じ京都に置くことになる。デザインマネジメントとスペース&メディア創造研究所の活動も、京都拠点がヘッドクオーターとなる。会見の会場になったFUTURE LIFE FACTORYについては、これまで入居していた東京・浜松町のビル内の空きフロアが新たな拠点となる。
臼井氏は「ただ商品化して届けるだけでなく、その商品を使い続けるお客さまの信頼を裏切らないように、パナソニックとお客さまを、過去、現在、未来にわたってつなぐ。そういった活動をデザイン本部で主導して行きたい」と述べている。
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