会見では、FUTURE LIFE FACTORYの新たな取り組みとなるスマート知育玩具「PA!GO(パゴ)」も紹介された。
本社組織のデザイン本部傘下になったFUTURE LIFE FACTORYのメンバーは現在、アプライアンス社から2人、ライフソリューションズ社から2人、コネクティッドソリューションズ社から1人、そして社外のデザインエンジニアから1人の計6人となっている。
FUTURE LIFE FACTORYが入るフロアは、“問いを立てる”ためのギャラリースペースや、“問いを具現化する”ためのアトリエスペースを設けるなど、オープンイノベーションやカンパニー間の連携をやりやすい環境になっている。そのオフィスコンセプトは「Melt:溶ける、融解する」(パナソニック デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORYの白鳥真衣子氏)だ。
より開かれた環境となったFUTURE LIFE FACTORYで開発が進められているのがPA!GOだ。パナソニック デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORY 主任意匠技師の今枝侑哉氏は「大人はあらゆる場所でスマートフォンやPCなどの画面を見ている。子供たちも、大人と同じように画面を見るばかりになっていないだろうか。そんな現状をテクノロジーによって変えられないか、子供たちの未来を伸ばせないか、という思いで開発した」と説明する。
懐中電灯のような外観のPA!GOは、カメラと画像認識のAI(人工知能)を搭載しており、子供が好奇心を持った動物や昆虫、植物などに向けてカメラでキャプチャーすると、キャプチャーした対象の説明が音声で流れる。これらのキャプチャーした情報は記録されており、分かりやすい画面でテレビに表示され、PA!GO本体はこの画面を操作するリモコンとして利用できる。子供の家族と情報をシェアするとともに、撮影したものに関連する動画のレコメンドなどもあるので、さらに深く学ぶこともできる。加えて、PA!GOに小型プロジェクターを取り付けて、懐中電灯で照らすように映像を投影できるようにする構想もある。「このときに、自分で組み立てたストーリーを子供から親に伝えることで、アクティブラーニングにもつなげられる」(今枝氏)という。
これらのコンセプトを早期に具現できるようにGoogleと協業して開発を進めている。カメラでキャプチャーした画像を認識するアルゴリズムの機械学習には「TensorFlow」を、画像識別モデルには「MobileNetV2」を、学習データにはオープンデータである「iNaturalist」を用いている。また、自宅外での利用を想定しているものの、Wi-Fi以外の通信機能を搭載していないため、GoogleのAIアクセラレータ「Edge TPU」※)にアルゴリズムを組み込むことでPA!GO単体で画像認識を行えるようにしている。「今のところは、鳥や昆虫、植物など特定カテゴリーに特化した上で1000種類くらいの画像認識が可能だ」(パナソニック デザイン本部 FUTURE LIFE FACTORY 主任意匠技師の川島大地氏)。
※)関連記事:グーグルがエッジデバイスにもAIチップを展開、推論実行に特化した「Edge TPU」
現在は、試作品の開発を終えた段階だが、2019年7月初旬に開催されたドイツ・ベルリンのイベントで参考展示を行うなどして製品化に向けた手応えを感じている。さらに次の段階に進めるため、筐体を段ボールにしてDIYで作れるようにしたPA!GO体験キットを2019年秋以降をめどに発売する計画だ。Webサイト経由での販売の他、一部実店舗での販売も行うとしている。
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