Arm Total Solutions for IoTは3つの要素から構成されている。1つ目は、ArmのプロセッサコアやインターコネクトなどのIPをパッケージにした検証済み統合型サブシステム「Arm Corstone」である。Arm Corstoneは物理ICを製造するためのもので、既にArmのシリコンパートナーによる150以上の製品設計に用いられてきた実績がある。
2つ目は、このArm Corstoneと機能等価な設計用IPパッケージをクラウド上の仮想環境に再現したArm Virtual Hardware Targetだ。中島氏は「Arm Virtual Hardware Targetsを利用することで、ハードウェアができるまでソフトウェアを開発できないという固定観念を打ち破れる」と強調する。特に力を発揮するのが、IoT機器にAIを組み込むエッジAIの開発だ。
3つ目の要素は、IoT機器に広く用いられているCortex-Mコア関連のエコシステムを整備する「Project Centauri」である。オープンソースで公開しているクラウド−デバイス間の標準仕様「Open-CMSIS Pack」、セキュリティ認証「PSA(Platform Security Architecture)」、PSAに準拠したセキュアなファームウェアのレファレンス実装「Trusted Firmware-M」などの活動を1つにまとめるものだ。
これまでのIoT機器の開発では、製品企画に対して求められる物理ICを製造し、ボード設計やハードウェア設計が完了するまでソフトウェア開発に着手できないことがボトルネックになっていた。Arm Total Solutions for IoTでは、物理ICの設計開発と並行しながら、Arm Virtual Hardware Targetsを活用してソフトウェア開発を行えるため開発期間を大幅に短縮できる。
Arm Total Solutions for IoTは、機械学習によるキーワード認識が可能なソフトウェア開発キットがGitHubで公開されている。Arm Corstoneについては、「Cortex-M55」と「Ethos-U55」を搭載する「Corstone-300」が利用可能で、今後は「Cortex-M33」を搭載する「Corstone-200」をはじめラインアップを拡充する計画だ。なお、Corstone-300は、年間利用料を支払うことでArmのさまざまな半導体IPにアクセスできる「Arm Flexible Access」で利用できるようになっている。また、Arm Virtual Hardware Targetsは、AWSのクラウド上で無償提供されており、現時点ではCorstone-300と等価なモデルを利用できるという(クラウドそのものの利用料は必要)。
なお、Arm Total Solutions for IoTの先行利用企業としてもAWSの名前が挙がっている。AWSでは、音声アシスタント「Alexa」搭載機器を開発する際のCI/CDプロセスで活用されるという。
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