Armがマイコン向けプロセッサコアIP「Cortex-Mシリーズ」の最新プロダクト「Cortex-M55」と、Cortex-Mシリーズとの組み合わせにより機械学習ベースの推論アルゴリズムを効率的に実行できるNPU「Ethos-U55」を発表。Cortex-M55とEthos-U55を組み合わせた場合、現行の「Cortex-M33」と比べて推論アルゴリズムの処理性能は最大480になる。
Armは2020年2月10日(現地時間)、マイコン向けプロセッサコアIP「Cortex-Mシリーズ」の最新プロダクト「Cortex-M55」と、Cortex-Mシリーズとの組み合わせにより機械学習ベースの推論アルゴリズムを効率的に実行できるNPU(ニューラルプロセッシングユニット)「Ethos-U55」を発表した。Cortex-M55とEthos-U55を組み合わせた場合、現行の「Cortex-M33」と比べて推論アルゴリズムの処理性能を最大480倍まで向上できるという。Cortex-M55、Ethos-U55とも既にライセンス可能な状態であり、早ければ2021年初頭に搭載製品が半導体メーカーから出荷される見込み。Alif Semiconductor、恒玄科技(Bestechnic)、サイプレス(Cypress)、NXP、サムスン(Samusung)、STマイクロ(STMicroelectronics)などが採用を表明している。
Cortex-Mシリーズは、搭載製品が累計500億個以上出荷されるなど幅広く採用されているマイコン向けプロセッサコアIPである。Cortex-M55は、その最新ラインアップであり、Armの最新のマイコン向けアーキテクチャである「Armv8.1-M」と併せて、ベクター演算処理技術である「Helium」を初めて採用している。Heliumは、これまでアプリケーション処理向けプロセッサコアIP「Cortex-Aシリーズ」で利用されてきた「NEON」を基にマイコン向けに最適化された技術で、Cortex-M33と比べた処理性能は推論アルゴリズムで15倍、DSP命令で5倍に達する。バスシステムについても、推論アルゴリズムの処理に求められるデータの演算と移動に最適化したものを採用している。
また、命令セットのカスタマイズを可能にする「Custom Instruction」にも対応しており、半導体製品の開発期間短縮に向けてレファレンスデザインの「Corstone-300」も用意した。セキュリティ関連では、「TrustZone for Armv8-M」でセキュリティ機能を実装できる他、セキュリティ認証である「PSA Certified」の取得も容易としている。
一方のEthos-U55は、マイコンに用いられるCortex-Mシリーズ向けとして初めて開発されたマイクロNPUとなる。推論アルゴリズムの処理性能は、Cortex-M55と比べて最大32倍を実現している。低消費電力が求められることが多いマイコンとの組み合わせを前提に、メモリ利用の効率化を重視した設計を測った。具体的には、メモリの帯域幅を下げるとともに、データの圧縮伸長ロジックを組み込んでいるという。
対応するCortex-Mシリーズは、Cortex-M55の他、Cortex-M33、「Cortex-M7」と「Cortex-M4」がある。DSP処理に対応しない「Cortex-M23」や「Cortex-M3」では利用できない。なお、MACユニット数は32、64、128、256から選択できる。
Cortex-M55の回路規模(フットプリント)は、Heliumを除くとCortex-M33とほぼ同等。MACユニット数が32個のEthos-U55の回路規模は、Heliumを除いたCortex-M55より一回り小さいくらいである。製造プロセスについては、Cortex-M33で適用可能なものを利用できるという。
Armは、Cortex-M7と、Cortex-M55単体、Cortex-M55とEthos-U55の組み合わせについて、推論アルゴリズムを用いた音声認識機能の処理性能の比較結果を公表している。処理速度は、Cortex-M7と比べると、Cortex-M55単体で6倍、Cortex-M55+Ethos-U55で50倍になる。消費電力効率は、Cortex-M55単体で7倍、Cortex-M55+Ethos-U55で25倍に達するという。
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