ローソンは2021年8月20日、小売りや飲食業界のDX戦略や事例を紹介するイベントで、同社が実証実験中のレジレス店舗をテーマとした講演を行った。
ローソンは2021年8月20日、小売りや飲食業界のDX戦略や事例を紹介するイベント「SHINAGAWA イノベーションフォーラム in 五反田バレー ニューノーマル時代に加速する小売・飲食業界のDX戦略 店舗DX」で、同社が実証実験中のレジレス店舗をテーマとした講演を行った。ローソンの担当者が、実験を通じて得られた成果や知見などを語った。
2020年2月26日よりローソンは、富士通新川崎テクノロジースクエア(神奈川県川崎市)内で「ローソン富士通新川崎TS レジレス店(以下、レジレス店)」を実験的に運営している。同店では、生体認証技術やAI(人工知能)ソリューションを導入して、利用客が商品を手に取って退店するだけで決済が完了するという、レジレス化の仕組みを構築している。
具体的な利用の流れは以下の通り。利用客は入店時、入口付近にある端末に専用のスマートフォンアプリ「Lawson Go」をかざすか、もしくは顔認証と手のひら静脈認証による本人確認を行う。入店後は店舗内のAIカメラが利用客の行動を捕捉する。カメラから取得したデータを解析し、商品棚センサーのデータと組み合わせることで、利用客が手に取った商品が高精度で特定できる。利用客は商品を取った後、そのまま退店すれば自動的に決済が完了する。購入後は電子レシートが利用客のスマートフォンに配信される。
一連の仕組みには3社の技術が活用された。顔認証や手のひら静脈認証といった生体認証技術は富士通が、カメラや各種センサーを用いたAIソリューションは米国のAIスタートアップZippinが、スマートフォンの専用アプリケーションと決済回りのシステム開発はローソンがそれぞれ担当している。
ローソン マーケティング戦略本部 兼 オープンイノベーションセンター アシスタントマネージャーの佐藤正隆氏は、レジレス化が利用客とローソンそれぞれにもたらす価値として、「レジ待ちのない購買体験」と「省人化と機会ロスの削減」の2つがあると説明する。
レジレス化による省人化効果については、レジ関連業務に関する作業量の削減によって、通常のローソン店舗と比較して労働時間を4分の1に減らすことが可能になったとする。このため、レジレス店で新規に従業員を雇用することなく、付近にある母店(レジレス非対応)の従業員が業務の隙間時間にレジレス店で業務を行う、というオペレーションを実現したという。
また、母店では朝や昼など待機列が生じやすい時間帯に店を訪れて、購入を諦めてしまう利用客も一定程度いる。こうした利用客が、待機列に並ばずに済むレジレス店に流入しており、エリア全体で機会ロスを減らすことに貢献している。
加えて、購買データを分析したところ、利用客によるレジレス店での購入品目自体は母店と大きく変わらないものの、菓子製品の購入が多いことが分かった。「小腹のすく時間帯に菓子製品を購入する人が多い。母店にもセルフレジはあるが、より待機時間が短く済むレジレス店を選択する利用客が多いようだ」(佐藤氏)。
佐藤氏はレジレス店の稼働開始直後についても振り返り、当初は技術的、あるいは立地的な制約などさまざまな課題に直面していたと語った。「システム的な面では、利用客の購入後、スマートフォンにレシートが配信されないということもあった。現在ではこれらの課題への改善策を積み重ねることで、利用客のニーズにかなり対応できるようになっている」(佐藤氏)。
佐藤氏は今後のレジレス店舗の展開について、「Lawson Goの取り組みを通じて、“実店舗のEC化”を部分的に実現できたと感じる。今後はデータの効果的な利活用の仕方も検討したい。また、Lawson Goは使用時に情報登録が必要になるため、基本的には利用客による継続的なリピートが見込める、病院や工場、イベント会場などに出店するのが良いと考えている」と語った。
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