NTTドコモは、オンライン参加している「MWC Barcelona 2021」の出展物を報道陣に披露する「MWC2021 docomo Special Showcase in Tokyo」を開催。電波の直進性が高くカバレッジに課題のあるミリ波帯を用いた通信について、誘導体導波路を活用して任意のエリアで通信を行えるようにする技術「つまむアンテナ」を紹介した。
NTTドコモは2021年6月29日、東京都内の本社ビルにおいて、オンライン参加している「MWC Barcelona 2021」の出展物を報道陣に披露する「MWC2021 docomo Special Showcase in Tokyo」を開催。電波の直進性が高くカバレッジに課題のあるミリ波帯を用いた通信について、誘導体導波路を活用して任意のエリアで通信を行えるようにする技術「つまむアンテナ」を紹介した。
既に商用利用が進んでいる5Gだが、ミリ波である28GHz帯の通信については、電波の直進性が高いこともあってカバレッジ(電波の送受信が可能な範囲)に課題があることが指摘されている。また、今後の5Gは39GHz帯や60GHz帯の活用を検討しており、次世代のBeyond 5G/6Gでは300GHz以上のテラヘルツ波の利用が想定されている。
今回紹介したつまむアンテナは、これら直進性の高いミリ波帯以上の周波数を用いる通信のカバレッジ改善技術として開発が進められているものだ。
技術の中核となるのは、ミリ波帯以上の電波の伝送が可能な誘導体導波路である。電波を流す導体としては、同軸ケーブルや導波管などがあるが、誘導体導波路は同軸ケーブルのような中心導体がなく、導波管のように周囲を金属に囲まれておらず、フッ素樹脂などによる棒状の線路となっている。光ケーブルと同じような構成だが、樹脂製のコアの周囲をクラッドとなる空気が囲むことで、電波を外部に放射することなく誘導体導波路に沿って伝送できる。「40〜50年前に開発された誘導体導波路は、高周波の伝送に役立つことは知られていたが、当時はそういった高周波を活用するアプリケーションがなかった。5Gの時代になって、その特性に再びスポットライトが当たった」(NTTドコモの説明員)という。
直線形状の誘導体導波路は真っすぐに電波を伝送し外部に放射しないが、その途中に突起を形成したり、突起状の誘導体を外から設置したりすると、その突起部から誘導体導波路内の電波を放射する。つまむアンテナはこの特徴を利用しており、突起状の誘導体が付くようにした洗濯ばさみで誘導体導波路を“つまむ”ことで、動的に任意の場所を通信エリアにすることができる。
展示では、工場の箱詰めラインの状態を撮影するカメラの映像を60GHz帯の無線通信で別エリアに伝送するデモを披露した。工場のシャッターを閉める前はスムーズにカメラ映像を伝送できているものの、シャッターを閉めると映像伝送が停止する。しかし、別エリアにつながる誘導体導波路をつまむアンテナでつまむと、映像の伝送が再開するという内容だ。
つまむアンテナは開発中の段階で、実用化の時期などは未定。現時点では、入手可能な誘導体導波路の長さである約10mまでしか検証していないが「今後は電線や材料のメーカーなどの協力を得てさらなる長尺化を目指す」(同説明員)としている。
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