NTTドコモは2021年3月31日、時速90km以上で走行する車両に5G通信端末を搭載して、連携する複数基地局を瞬時に切り替える実証実験に成功したと発表した。高速移動中の移動体に対する、安定的な5G通信サービスの実現につながる可能性がある。
NTTドコモは2021年3月30日、時速90km以上で走行する車両に5G通信端末を搭載して、連携する複数基地局を瞬時に切り替える実証実験に成功したと発表した。高速移動中の移動体を対象とした、安定的な5G通信サービスの実現につながる可能性がある。
実証実験では、5G通信の中でも高周波数帯に属する27.6GHz帯(帯域幅100MHz)のミリ波を使用した。
ミリ波は高速かつ大容量通信を実現し得るが、高周波数帯のため電波が遠くまで届きづらく、1つの基地局でカバーできる通信エリアが狭くなりやすい。加えて、遠方までミリ波を届けるには特定方向に電波を集中して発射するビームフォーミング技術を用いるが、複数の通信端末に対して電波を送ると互いのビームが干渉して通信速度が低下するといった課題もあった。
このため、特に高速移動体でミリ波を安定的に利用する場合には、移動体上の5G通信端末に対して、連携する複数基地局間で通信の切り替えを適切なタイミングで行う必要がある。その実現可能性を検証するのが、今回の実証実験の狙いだった。
実証実験は2021年2月20日〜3月6日にかけて、日本自動車研究所の自動車走行テストコース(茨城県城里町)で実施した。走行コース上に無線通信機器や、複数信号の同時送信を可能にするMassive MIMOアンテナを搭載した5G基地局を3つ、約200m間隔で直線状に設置して400mに及ぶ通信エリアを構築。基地局の両横を5G通信端末を載せた2台の測定用車両を時速90〜120kmで並走させて、複数通信端末による基地局切り替えを試験した。また、基地局にはビームフォーミング技術をデジタル制御して、高速移動する通信端末に合わせて基地局の電波の方向を自動で向ける技術「デジタルビームフォーミング」を実装したという。
結果、時速90kmでの車両走行時に、通信端末1台当たり4bit/秒/Hzの周波数利用効率を安定的に実現した。これは、NTTドコモが現在提供している28GHz帯の5G通信サービスで400MHzの帯域幅を利用した場合に、下り速度最大1.6Gbps相当を達成したことになるという。さらに時速120km走行時にも、3bit/秒/Hzの周波数利用効率を実現した。
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