5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

6G以降で期待される光無線通信、ソフトバンクとニコンが合同実証で第一歩組み込み開発ニュース

ソフトバンクとニコンは、AI技術、画像処理技術、精密制御技術を組み合わせることで2台の通信機が双方向で360度追尾可能な「トラッキング光無線通信技術」の実証に世界で始めて成功したと発表した。

» 2021年03月19日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 ソフトバンクとニコンは2021年3月18日、AI(人工知能)技術、画像処理技術、精密制御技術を組み合わせることで2台の通信機が双方向で360度追尾可能な「トラッキング光無線通信技術」の合同実証を行ったと発表した。光無線通信技術の新たな利用シーンの創出を目的として2020年12月に実施したのもので、2台の光無線通信機が同時にそれぞれ任意の方向へ移動しながら相手を追尾し、通信が途切れないことを確認する実証実験として「世界で初めて」(リリース文より)成功したという。

「トラッキング光無線通信技術」の合同実証の様子 「トラッキング光無線通信技術」の合同実証の様子(クリックで拡大) 出典:ニコン

 これまで電波通信では、高速・大容量化を追求するために波長の長い電波から波長の短い電波へと活用が進んできた。現在普及が進みつつある5Gでは、従来レーダーなどの限定された用途で利用されてきた、波長が極めて短く光に近い性質を持つミリ波が用いられている。さらに、5Gの次世代移動体通信技術といわれるBeyond 5Gや6G以降では、ミリ波よりも波長が短く、ミリ波と同様に用途が限定されていた“光”を用いた無線通信の活用も期待されている。

光を使った無線通信では通信機の向きがずれると通信が切れてしまう 光を使った無線通信では通信機の向きがずれると通信が切れてしまう(クリックで拡大) 出典:ニコン

 しかし、光は電波よりもさらに直進性が高く、電波と異なって水中は透過するが物体は透過しないという性質を持つため、光の活用には「見通し(LOS:Line of Sight)」の確保と、通信機同士の双方向トラッキング技術が必須になる。ソフトバンクとニコンは、このLOSの確保と光無線通信機同士の双方向トラッキングの実現に向けて技術検討を進めていた。

 今回発表した合同実証では、AI技術、画像処理技術、精密制御技術を駆使して水平方向360度、垂直方向50度の追尾性能を持つトラッキング光無線通信機を開発。2台の通信機が互いに捕捉することで光軸を合わせ、通信機それぞれが移動しても途切れずにデータ通信する実証に成功したという。

 なお、今回の実証は、街中での活用を見据え、安全なLED光無線通信機(通信距離:100m、通信速度:100Mbps)で行った。今後は、高出力なレーザー光を用いることによる長距離化や高速化、小型化により、車車間通信や路車間通信、無人搬送車などの産業用ロボットやドローンとの通信、電波が通らない水中での無線通信といった、より専門性の高い領域で新たな市場創出が期待されるとして、今後も両社で引き続き研究開発および実証を進めていくとしている。

ドローンやモビリティ、水中などでの光無線通信の利用イメージ ドローンやモビリティ、水中などでの光無線通信の利用イメージ(クリックで拡大) 出典:ニコン

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