東原氏は、中期経営計画の進捗説明において「社会イノベーション事業をグローバルに拡大するため、デジタルプラットフォームの構築を進め、必要となるOT(制御技術)アセットを獲得してきた」と強調する。例えば、デジタルプラットフォームの構築では、グローバルロジック(GlobalLogic)の買収(2021年7月予定)でグローバルのソフトウェアエンジニアリング力の強化を図っており、OTアセットの獲得では日立ABBパワーグリッドの買収や日立アステモの設立などを進めている。
また、日立化成や日立金属などの上場子会社を売却するなどして、事業ポートフォリオの変革も進めており、残る日立建機も2021年度内をめどに一定の方向性を出していく方針だ。「基本的には、日立建機がどうやってグローバルでの成長を目指せるかという観点で、同社の経営陣に検討してもらっている」(東原氏)という。
現中期経営計画が終了する2021年度の次年度となる2022年度は、これら事業ポートフォリオ変革が完了し本格的な事業成長につなげられることから、調整後営業利益率、ROIC(投下資本利益率)ともに10%を実現できる見込みだ。
日立ABBパワーグリッドについては、脱炭素のトレンドを受けて好調な送配電事業に加えて、同社の厚い顧客基盤を用いたクロスセルが期待でき、さらに欧米をはじめグローバルに事業を展開するために構築してきた事業運営体制を日立全社に適用することによるコスト構造改革の効果も得られるという。2025年度までに、共通ERPの構築で700億円、調達や人事、財務などの業務へのグローバルシェアードサービス活用で1000億円の効果を見込んでいる。
また、グローバルロジックが加わることによるソフトウェアエンジニアリング強化は、さまざまな顧客との協創で生み出したアプリケーションをコンテナ化し、再利用可能なソフトウェア資産としてグローバルに展開する上で重要な役割を果たすとしている。東原氏は「『Scale by Digital』で伸ばすLumada関連事業は、コンテナの再利用で利益率をどんどん伸ばせる」と説明する。
Lumada事業のうちITセクターの関わりが深いコア事業の利益率は現時点で十数%程度あるが、投資回収の段階に入る今後3年間で利益率20%を目指す状況にある。他4セクターと日立アステモがけん引するLumada関連事業の利益率を伸ばす上では、このアプリケーションのコンテナ化が鍵になりそうだ。なお、東原氏は「Lumada事業は2025年度に、売上高で2兆数千億円、利益率20%近くになるだろう」と述べている。
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