日立製作所が環境や研究開発、知財に関する事業戦略を説明した。同社 執行役副社長でChief Environmental Officer(最高環境責任者)を務めるアリステア・ドーマー氏は「CO2排出量削減のマクロトレンドは日立にとって追い風だ」と語った。
日立製作所(以下、日立)は2021年2月25日、オンラインで会見を開き、環境や研究開発、知財に関する事業戦略を説明した。3つの事業戦略で中核となっているのは、日本を含めた世界各国で進むCO2排出量削減に向けた環境規制への対応である。同社 執行役副社長でChief Environmental Officer(最高環境責任者)を務めるアリステア・ドーマー氏は「このマクロトレンドは日立にとって追い風だ。エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの4セクターが持つグリーンテクノロジーと、ITセクターを中心とするデジタル技術の掛け合わせが成長エンジンとなるだろう」と語る。
ドーマー氏は、日立がこれまでに環境目標と掲げている、2030年度のカーボンニュートラル達成と、2050年度までのCO2排出量80%削減(2010年度比)について「十分に達成可能である」と強調。その上で、2030年度のカーボンニュートラル達成に向けて、10年間で840億円を投資する方針を明らかにした。このうち600億円をエネルギー効率向上技術、240億円を再生可能エネルギーの購入に充てるとしている。
「CO2排出量削減が日立の追い風になる」という言葉には、それによって同社の事業成長が見込めることが背景にある。例えば、スイスのABBから買収した送配電事業を手掛ける日立ABBパワーグリッドは、2050年に現在から倍増する電力需要の中核を成す再生可能エネルギーの大きな変動を吸収しながら効率的に送配電するスマートグリッド技術があるという。
また、ドーマー氏が成長をけん引してきた鉄道事業や新たにホンダ系サプライヤー3社が加わった車載システムを扱う日立アステモが対象とする自動車分野などの運輸セクターでもCO2排出量削減に大きく貢献できるとした。鉄道事業では、ディーゼルエンジン車両の代替として蓄電池ハイブリッド車両の採用が拡大しており、イタリアでは蓄電池駆動トラムが採用された。
EV(電気自動車)をはじめとする電動車市場(台数ベース)は2025年に向けて年率27%で成長すると日立アステモは予測しており、EVバスやEVフリート向けに「デジタル技術を生かして、バリューチェーン全体でサービスを提供するターンキーサービスソリューションを提案する」(ドーマー氏)方針である。
また、製造業でもある日立自身が持つ脱炭素に向けたモノづくり技術をソリューションとして提供する。2021年2月から日立中央研究所に導入した、施設・サービスごとに再生可能エネルギーの利用状況を見える化するとともに再生可能エネルギーの100%使用を認証するシステム「Powered by Renewable Energy」なども活用していく。
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