それでは過去はどうだったのでしょうか。1997年のデータを基にしたのが図5です。
今後のデータで明らかとなっていきますが、1990年と1997年は統計データで見る限り、日本経済で大きな転換点となった年です。1990年はもちろん、バブル崩壊の年です。一方、1997年は所得やGDPのピークとなった年です。
実は1997年の日本人の平均給与は、3万8823ドルと、スイスやルクセンブルクに次いでOECDで3番目の堂々たる高水準でした。OECDの平均値2万2468ドルの1.5倍以上です。かつての日本はこれほどまでに、高い水準の経済力を誇っていたわけですが、現在はこの平均値にも満たないレベルになっているというわけです。
こうしてみると、明らかに、日本の労働者の所得は、国際的に見て下がっているのです。しかも、このように明らかに衰退しているのは、主要国では日本くらいです。ドル換算のデータでは分かりにくいので、自国通貨での成長率に直したグラフを見てみると一目瞭然となります。図6は、2000年を基準にした、各国の平均給与の成長率を示しています。
ご覧のように、平均給与が減少し、地をはうように推移しているのは日本だけです。他の多くの国は右肩上がりで成長しているのです(実質値にしても、傾きは緩くなりますが、傾向は変わりません)。ドイツが年率で約2%成長、米国や英国、カナダが年率約3%の成長、韓国が年率約4%の成長となっています。日本だけが、なぜか成長しておらず、むしろ停滞しているという事実にがくぜんとします。
このような状況はなぜ生まれたのでしょうか。日本経済に一体何が起こっているのでしょうか。次回以降で、少しずつ日本経済の現状を明らかにしていきたいと思います。
⇒次回(第2回)はこちら
⇒本連載の目次はこちら
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧
小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.