中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、4回に分けて紹介している。第4回は、中小企業における世代交代の実態を主に「次世代の経営者」の状況を中心にお伝えする。
経済産業省 中小企業庁は2019年4月に「2019年版 中小企業白書」(以下、中小企業白書2019)を公表した。本連載では中小企業白書2019を基に、中小製造業を含めた中小企業における人手不足や、そのような状況下で中小企業に求められる労働生産性を向上させるための新たな取り組み、また中小企業における世代交代の実態などについて4回に分けて考察する。
第1回の「深刻化する中小製造業の人手不足」では、中小企業の人手不足の現状や現況下での雇用の在り方について、また第2回の「中小製造業に求められる自己変革」では、避け難い人手不足の状況下における「デジタル化」や「グローバル化」といった、中小企業に求められる自己変革について掘り下げた。
連載後半は2回に分けて中小企業における世代交代の実態について取り上げている。第3回の「中小製造業における経営者の引退で生まれる問題」では経営者の高齢化の実態やそれに伴う事業承継に向けての準備、有用な事業や経営資源を次世代の経営者に譲り渡すことの重要性などを見てきた。最終回となる第4回では、事業や経営資源を譲り受ける者を含む「次世代の経営者」に着目する。
中小企業白書2019では「次世代の経営者」を分析するに当たり、経営者参入の概念を図1のように整理している。この分類によると「次世代の経営者」とは、新たに経営者に参入する者のことを指し、さらに経営者参入を経営資源の引き継ぎの有無によって「起業」と「事業承継」の2つに分類している。
本連載の第3回でも触れた通り、「事業承継」とは経営者が引退しても「事業が継続する」ことを指す。つまり、参入する経営者にとっては「既存の事業を継続させる」ということになる。また「事業承継」した場合は、事業を行うために必要な事業用資産(設備・不動産)、資金、取引先との人脈、顧客情報、ノウハウなどの経営資源を何かしら引き継ぐことになる。
「起業」については新たな事業を開始することを指し、次の2つに整理している。
「起業」を目指していた人が、場合によっては新たに事業を開始するよりも既存の事業を承継する方がメリットが大きいと判断し、「事業承継」により経営者になるケースも考えられる。そのため中小企業白書2019ではこうした「事業承継による経営者参入も視野に入れながら起業を目指す者」についても紹介している。
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