中小製造業で次世代経営者が抱える問題と「継ぎたくない理由」2019年版中小企業白書を読み解く(4)(7/8 ページ)

» 2019年09月04日 13時00分 公開
[長島清香MONOist]

事業を継ごうと思う理由・思わない理由

 次に、積極的後継者候補が事業を継ごうと思う理由や、消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由を見ていきたい。

 まず、積極的後継者候補が事業を「継ぎたい・継いでもよい理由」を見たものが図19である。これを見ると、「事業がなくなると困る人(取引先・従業員など)がいるから」「事業に将来性があるから」と回答した者が多いことが分かる。

photo 図19:積極的後継者候補が事業を継ぎたい・継いでもよい理由(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

 一方、消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由について見ると「事業の将来性」が「自身の能力の不足」の次に多い理由になっていることが分かる(図20)。

photo 図20:消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

 さらにこの「事業の将来性」と回答した者と回答しなかった者に分けて、「事業の将来性」以外の前向きでない理由を見たものが図21だが、これを見ると、事業の将来性への懸念の有無にかかわらず、「自身の能力の不足」と回答した者の割合はほとんど変わらない。

photo 図21:事業の将来性への懸念有無別、消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

 これらの結果から、自身の能力に対する懸念は、事業の将来性に対する展望とは関係なく事業継承をためらう最大の障壁であることが分かる。中小起業白書2019では、後継者になる可能性のある者には、早めに自身の能力を見極め、継ぐためにはどのような能力を身に付ける必要があるのかを知ることができるようにすることで、事業承継に前向きになる可能性があると指摘している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.