中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、4回に分けて紹介している。第3回は、中小企業における世代交代の実態について紹介する。
経済産業省 中小企業庁は2019年4月に「2019年版 中小企業白書」(以下、中小企業白書2019)を公表した。本連載では中小企業白書2019を元に、中小製造業を含めた中小企業における人手不足や、そのような状況下で労働生産性を向上させるための「デジタル化」「グローバル化」といった中小企業に求められる新たな取り組み、また中小企業における世代交代の実態などについて4回に分けて考察する。
第1回の「深刻化する中小製造業の人手不足」では、中小企業の人手不足の現状を明らかにするとともに、現況下での雇用の在り方について掘り下げた。第2回の「中小製造業に求められる自己変革」では、「デジタル化」や「グローバル化」といった、中小企業に求められる自己変革について掘り下げた。ここからは特に2回に分けて、中小製造業における「世代交代」の実態について考察する。
まずは、経営の担い手の推移を俯瞰したい。図1は個人事業者を含む日本企業の「経営の担い手」の推移を示したものだが、1992年から2017年にかけて59歳以下の経営の担い手が約45%減少しているのに対し、60歳以上の経営の担い手は約25%増加している。2017年時点で60歳以上の経営の担い手が59歳以下の数を上回っていることからしても、経営の担い手の高齢化が進んでいることが分かる。
次に中小企業の経営者の年齢分布を見ると、調査時における最も多い経営者の年齢は、1995年には47歳だったが、2018年には69歳となっている(図2)。この点からも経営者年齢の高齢化が進んでいることが分かる。
このような経営者の高齢化が明らかに進む中で休廃業および解散企業は年々増加傾向にある。ここ数年は3万件台から4万件台に推移しているが、2018年には4万6724件を記録している(図3)。
図3で確認したように、中小企業や小規模事業者が年々減少する状況の中で日本経済が持続的に成長するためには、企業がこれまで培ってきた未来に残すべき価値を見極め、事業や技術、ノウハウや設備などの貴重な経営資源を次世代に引き継ぐことが重要となる。そこで、本稿では、経営者が引退するまでの実態と、経営資源を引き継ぐに当たっての課題などを明らかにしていく。
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