次に引き継ぎの中の一形態である、「廃業した経営者」における経営資源の引き継ぎの実態を明らかにする。まず、廃業する企業からの再就職や独立を希望する従業員の実態や課題についてスポットを当てたい。
図14は、経営者が引退を決断してから引退するまでの間に再就職や独立を希望する従業員がいたかを示したものだが、廃業した企業のうち4割弱に再就職や独立を希望する従業員がいることが分かる。
その中で「経営者の支援により再就職や独立が決まった従業員が1人以上いた」とする割合は約半分となっている。また、従業員の再就職先について見ると、同業種が中心となっていることが分かる(図15)。
販売先や顧客の引き継ぎについては、約6割の廃業企業が継続的に取引のある販売先や顧客を保有している。そのうち、65.6%が他者に引き継いでいる(図16)。
事業用設備の引き継ぎについては、約6割の廃業企業が、事業用設備を所有しており、そのうち、53.6%が他者に引き継いでいる(図17)。
さらに事業用不動産につては、事業用不動産を所有している36.1%の廃業企業のうち、48.2%が他者に引き継いでいることが分かる(図18)。
これまで、事業承継に向けた取り組みや、廃業とそれに伴う経営資源の引き継ぎの取り組みについて詳しく分析してきた。では、実際に経営者が引退に向けて事業承継を選択すると、どのような課題に直面するのだろうか。経営者引退を決断した時点での事業の状況や、引退に際しての課題などについて、「事業承継した経営者」と「廃業した経営者」を分けて見ていく。
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