【トラブル4】射出成形した製品が反ってしまった!! その原因と対策アプローチ2代目設計屋の事件簿〜量産設計の現場から〜(4)(2/2 ページ)

» 2021年03月10日 10時00分 公開
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L字形状の変形を防ぐには?

 このままの状態では、製品として“不良”となりますので、この変形を対策しなければなりません。金型の製作や成形時に温度を調整することでバランスをとるという方法もありますが、ここでは製品設計の視点で、L字形状の変形対策を考えてみることにします。

対策1:肉厚を調整する

 外側の面に対して、内側の方が金型に当たる面積が小さいために、このような変形が起こるわけですから、製品の肉厚を調整するなどして、金型に接する面積の差を小さくし、温度差を抑えるというアプローチが考えられます(図6左)。厳密に同面積にすることは難しいかもしれませんが、極力差を小さくすることで今回のような変形を軽減させることが可能です。

対策2:変形防止のリブを設定する

 変形に対して「リブ」を設定し、補強するというアプローチもあります(図6右)。補強リブは、製品強度を高めるためにもよく使用される一般的な手法であり、さまざまな樹脂製品で見ることができます。ただし、リブを設定すると製品の外観にヒケが出やすくなるため、設定には注意が必要です。

変形を軽減、防止するための対策について 図6 変形を軽減、防止するための対策について [クリックで拡大]

箱状の製品の反りを防止するには?

 ここまで理解できれば、今回の相談内容である“箱状の製品で発生してしまった反り”の原因と対策についても想像が付くのではないでしょうか。

 ご覧の通り、箱状の製品の四隅はL字形状をしていますので、四隅は先ほど説明したような温度差が生じやすくなり、それに伴って形状が変形してしまいます(図7)。四隅のそれぞれで起こった変形の結果、図1右で示した箱の四面が内側に反った成形品が出来上がってしまったのです。

箱状の製品の反りはL字形状のときと同様に、肉厚を調整したり、補強リブを設けたりして対策する 図7 箱状の製品の反りはL字形状のときと同様に、肉厚を調整したり、補強リブを設けたりして対策する [クリックで拡大]

 この対策については既に解説した通りで、L字形状と同様に、肉厚を調整したり、補強リブを設けたりすることで、反りを防止することが可能です。



 以上のように、肉厚の調整や補強リブなどを製品設計に反映することで、成形時の不良(今回の場合は“反り”)を軽減できます。もちろん、金型製作や成形を行う際にも反りや変形の対策は可能ですが、製品設計で全く対策がされてない製品を金型や成形だけで完全に対策できる保証はありません。このようなトラブルを未然に防ぐためにも、製品設計の段階で対策を施すことを強くオススメします。 (次回へ続く

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Profile

落合 孝明(おちあい たかあき)

1973年生まれ。2010年に株式会社モールドテック代表取締役に就任(2代目)。現在、本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、中小企業の連携による業務の拡大を模索中。「全日本製造業コマ大戦」の行司も務める。また、東日本大震災をうけ、製造業的復興支援プロジェクトを発足。「製造業だからできる支援」を微力ながら行っている。

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