東京大学医科学研究所は、新型コロナウイルスに感染して発症した患者において、ウイルスによる抗体が、発症から少なくとも3〜6カ月間は維持されることを明らかにした。
東京大学医科学研究所は2021年2月12日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して発症した患者において、ウイルスによる抗体が発症から少なくとも3〜6カ月間は維持されることを明らかにしたと発表した。同研究所 教授の河岡義裕氏を中心とする、国際共同研究グループによる成果だ。
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研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者39人の血液中に含まれる抗体量を継時的に計測した。血中の抗体量は、SARS-CoV-2のウイルス粒子上にある主要な抗原タンパク質であるSタンパク質のレセプター結合領域、Sタンパク質の細胞外領域、SARS-CoV-2のウイルス粒子内でウイルスのゲノムRNAと結合しているNタンパク質を抗原として用いたELISA、中和試験によって測定した。
その結果、発症10日目くらいにウイルスに対する抗体が検出され、抗体価は発症20日目くらいにピークに達した。その後、抗体価は時間とともに低下するが、低下速度は徐々に緩やかとなり、抗体は3〜6カ月間維持された。
また、患者を重症度により3グループに分類して抗体応答を比較したところ、重症者グループは、軽症者グループに比べて最高抗体価の平均値が高かった。ただし、重症患者は抗体価の減少が著しく、時間の経過とともに重症者と軽症者の抗体価の差は縮まった。
これまで、SARS-CoV-2感染後に誘導される抗体は1カ月程度で消失してしまい、再感染するのではないかという懸念があった。しかし今回の結果から、抗体が6カ月程度は維持されることが分かった。これは一般的な急性感染症に初めて感染した時と同様の抗体応答と考えられる。
一方で、少数ながらも再感染例の報告があり、弱い抗体応答しか認められない症例が確認されている。これらを踏まえて研究グループでは、充分な抗体が誘導されない危険因子についてのさらなる検証が必要だとしている。
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