新型コロナウイルスの長期的な肺への影響と防御免疫記憶をネコで確認医療技術ニュース

東京大学は、新型コロナウイルスに感染したネコは、無症状にもかかわらず長期的に肺の炎症が続くこと、回復したネコは約4週間後に同ウイルスを接種しても感染しないことを明らかにした。

» 2021年02月01日 15時00分 公開
[MONOist]

 東京大学は2021年1月8日、新型コロナウイルスに感染したネコは、無症状にもかかわらず長期的に肺の炎症が続くこと、回復したネコは約4週間後に同ウイルスを接種しても感染しないという観察結果を発表した。同大学医科学研究所 教授の河岡義裕氏らによる成果だ。

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 研究では、ネコに新型コロナウイルスを感染させ、3、6、10日後に呼吸器を含めた全身の臓器の感染性ウイルスを検出した。その結果、鼻や気管などの上部呼吸器では感染6日目までウイルスの増殖が見られ、肺では3日目に限られた部分でのみウイルスが検出された。

 一方で、肺の病理解析をしたところ、肺からウイルスが検出されなかった個体でも炎症が確認され、炎症性サイトカインなどの間接的な要因で、肺組織がダメージを受けていることが示唆された。無症状で回復した個体でも、4週間後の肺の病理解析で慢性化した炎症像が確認された。

キャプション 新型コロナウイルス感染から28日後のネコ(左上3パネル)、感染28日後にウイルスを再接種し、再接種から21日後のネコ(左下3パネル)の肺の病理像 出典:東京大学

 次に、再感染について調査するため、回復した個体(感染から4週間後)に同じウイルスを接種した。本来ウイルスが増殖するはずの上部呼吸器や鼻洗浄液中からウイルスは検出されなかった。これは、ウイルス感染から回復した個体、同居ネコから感染して回復した個体に共通していた。

 このことから4週間という期間においては、新型コロナウイルスに対する免疫記憶が残り、再感染が防御されることが示唆された。

キャプション ネコを用いた新型コロナウイルス再感染実験タイムライン 出典:東京大学

 新型コロナウイルスはヒト以外でもイヌやネコ、ミンクなどに感染することが明らかとなっている。今回の知見から、新型コロナウイルスへの感染により付与される免疫は、一定の期間、再感染を防御する可能性が示唆される。

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