以上の内容から、軸心に対する振れ角度が微小であるため、解析結果に大きな差異が生じることはなく、想定した内容で「強度上問題ない」と考えることができます。ただし、使用材料のSN曲線については、より精度の高いものを必要とするという課題もあります。
今回想定した0.1度という軸心の振れ角度による部品先端の理想的な中心位置からの移動距離は90μmにすぎないことから、さらに角度設定の検証を行うことにします。
疲労破壊が発生するかどうかを評価します。そこで、角度が10倍の1度の場合について評価を行います。
既に、SOLIDWORKSの3Dモデル上で角度基準となる平面を作成しているので、この平面の設定角度を1度にし、各スタディのシミュレーションツリーにおいて[全ての構成部品の更新]をクリックして解析設定を更新した後に、再計算を実行します。ただし、先に行った解析結果も重要な情報ですので、上書きしてしまわないようにモデルのコンフィギュレーション管理に注意し、結果は別名でファイル保存するなどしてください。
計算結果から4.3×e5[サイクル]で疲労寿命の可能性があります。角度1度では、先端部品の移動距離は0.9mmとなります。設計者の感覚として、この量は大きいものですが、筆者の経験では「異常時に起こる可能性があるもの」と判断できます。
さらに、角度0.1度の場合も含めて、角度が付いている場合には、部品先端面に均一に荷重が掛かるわけでなく、片当たりする状況もあるなど、より悪い条件も考えていかなければなりません。また、材質変更を含めた解析検証を行うことも選択肢として挙げられます。
疲労寿命は、各位置で疲労破壊を引き起こすサイクル数(一定振幅スタディの場合)を表示します。プロットは、SN曲線と各位置の交番応力に準拠しています。
設計者CAEでは、過去の問題事象を考えながら検証することが重要です。例えば、部品の形体や組み立て精度、サイズ公差も考えた部品のバラツキなどを視野に入れて取り組むべきです。また、今回のテーマとなった「降伏応力を超えなくても疲労破壊が発生する可能性がある」という視点から、設計者CAEとして疲労解析を実施すべきだと考えます。
解析というのは、新たな事象に向き合うたびに学ぶことが多くあり、その経験によって、設計者としての引き出しが増えていきます。そういう意味で、学ぶべきことはまだまだありそうです。 (次回へ続く)
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